D2CのファッションEコマースをやるなら、今が絶好のタイミングです。最近のファッション業界レポートによると、世界のEコマースの収益は2018年の4,812億ドルから2022年には7,129億ドルに達すると見込まれています。想像もつかないほど大きな金額ですね。
こうしたポジティブな成長を促進している要因は、大きく4つあります。
- グローバル市場の拡大
- スマホ利用とインターネットアクセスの上昇
- 可処分所得をもった中流層の出現
- 新しいオンラインショッピング体験を実現するイノベーション技術
では、世界のアパレルECサイトは、こうした傾向をふまえて、どのような戦略をとっているのでしょうか?
ほかの競争相手を引き離すために、彼らがどのように人工知能(AI)、拡張現実(AR),グローバル展開,モバイル体験,チェックアウト機能などを使いこなしているか、これから見ていきましょう!
1 人工知能(AI): LeSportsac
主要なファッションECサイトの多くは、個々のユーザーにパーソナライズしたおすすめを提供して、客単価を上げるためにAIを利用しています。
LeSportsacは最近、AIを使用してハイパーターゲティングの個別化を実現するためにNostoと協働しました。顧客行動データをファネリングして,リアルタイムでマーケティングチーム、商品開発チーム、デザインチームで共有できるようにしています。たとえば下記の例のように、「あなたのエリアで人気」といったパーソナライズされた情報をサイトに反映することができるのです。
AIへの投資によって、サイトリニューアル後はEコマースの売上が12%上昇し、Eメールのクリック数は月30,000にまで増えました。
2 拡張現実(AR)とソーシャルショッピング:Nikeのエアジョーダンブランド
ナイキのエアジョーダンブランドは、シューズデザインと新技術の両面において、イノベーションを続けています。2018年のブランド30周年を記念して、ジョーダンはNBAオールスター期間中に、ARとSNSを使った限定スニーカーの発表イベントを行いました。
ジョーダンファンは、スラムダンクコンテスト時の有名なフリースローラインからの「フライト」を、3D ARビデオ(ワールドレンズと呼ばれるもの)で見ることができます。ワールドレンズを通じてジョーダンを色々な角度から見ることが可能で、タップすると2018年のオールスターユニフォーム姿になります。ジョーダンが履いているシューズは、ポップアップイベントの出席者だけが購入できる限定品です。
それからスナップコード(スナップチャットのQRコード)が表示され、スキャンすると、スニーカーファンは特設ストアにアクセスすることができます。今後1ヶ月は店頭に並ばないスニーカーが、スナップチャットのアプリを使うと、その場ですぐに購入できるのです。
スニーカーは23分で売り切れ、Darkstoreが運営する地元の配送センターとジョーダンブランドとのコラボのおかげで、即日購入者の家に届けられました。
3 割引やチェックアウト時の特典を自動化:Evy’s Tree
高級パーカーブランドのEvy’s Treeは最近、多様な割引を自動化し、価格や商品を再パッケージ化する方法を考案しました。モバイルユーザーにとって入力しにくい割引クーポンの代わりに、チェックアウト時にリアルタイムで割引を自動計算して適用(スクリプトを使用)することで、カスタマーエクスペリエンスを向上させています。
そして、この割引機能をSmile.ioに統合しました。これは、顧客がポイントを引き換える際に、追加の割引や送料無料などを含むさまざまな選択肢を提供することで、顧客ロイヤルティを獲得できるようにするものです。
チェックアウト時に自動割引や特典を提供したところ、50%以上のユーザーが複数回の購入をおこないました。
4 デジタル・トランスフォーメーション (Offline-to-Online):Urban Planet
多くのブランドを運営しているYM Inc.は、600以上の実店舗を抱えています。そのなかの代表的ブランドといえるUrban Planetは、Eコマースサイトを通して、既存の実店舗の買い物体験をよりよく活性化させようとしています。
Urban Planetは、拡張可能で信頼のおけるバックエンドと、カスタマイズ可能でユーザーフレンドリーなフロントエンドを組み合わせることで成功しました。
Urban Planetの変化について、以下で説明しましょう。
同社は、明確なCTAを設置することでナビゲーション機能を改善しています。それらはサイトの中で目立つように配置され、NEWやSALEといったタブで強調されます。そしてアップセルやクロスセルの機会提供において役立ちます。
さらにメニューには商品を見つけやすくするスマートなドロップダウンメニューが実装されました。
またUrban Planetでは、ユーザーが検索ボックスに文字を入力すると自動補完がはたらき、即座に、直感的に、商品の検索結果を見ることが可能になっています。
そして、O2O(online-to-offline)は数十億ドル規模の売り上げ機会(消費者が店舗内でモバイルショッピングしたり、来店前にモバイルサイトを見ることを結びつける)となるため、レスポンシブサイトを構築することはUrban Planetにとって最優先事項でした。
5 グローバル展開というスタイル:The 5TH
フェイスブックとインスタグラムで70万以上のフォロワーをもつオーストラリアのアクセサリーブランドThe 5THは、世界的なセンセーションを巻き起こしました。メルボルンから世界へ出荷する同社は、オンラインで強みをもつエリアに合わせて4つのECサイトを立ち上げています。
The 5THはまた、新しい顧客と直に接するために、ニューヨーク市などの知名度の高い地域でポップアップショップも展開しています。
このブランドは、プロモーション戦略として希少性を打ち出しており、限定モデルの新しい時計やバッグをリリースするときには、独占感を生み出しています。また、有名なクリエイターやコラボレーターとのパートナーシップを楽しませながら、顧客と深いレベルでの接点を築き上げています。
6 ワンクリック・モバイルチェックアウト:MVMT Watches
ユーザーがモバイルでチェックアウトのプロセスに進んだらすぐに、モバイルファーストな支払いオプションが提示されるべきです。ワンクリックで購入できる利便性を提供するオプションとしては次のようなものがあります。
- Apple Pay
- Shop Pay
- Google Pay
- PayPal
- Amazon Pay
しかし、一度にこの5つすべてのオプションが出てきたら、ユーザーは戸惑ってしまうでしょう。そのため、MVMT Watchesでは、既存のユーザーベースにおいてもっとも人気のある支払い方法のみを提示します。
このモバイルに最適化されたチェックアウトは美しくデザインされているだけではなく、人気の高い2種類の支払い方法がデフォルトとして設定されています。なお、Shopifyの動的チェックアウトボタンでは、お客様のブラウザや決済履歴などから最も適切な決済のオプションを表示させることが可能となっております。
7 Shop the LookとSwatch::Red Dress Boutique
商品を手軽に素早く購入できるプロセスが、コンバージョンに直結します。そのため、Red Dress Boutiqueでは、“Shop the Look”のようにコーディネートを丸っとワンクリックで買える仕組みを戦略的にEコマースサイトに導入しています。
新戦略の導入後、Red Dress Boutiqueの売り上げは前年同期比で2桁の成長を記録しました。また、Red Dress BoutiqueはSwatchifyを活用していて、これにより人気商品の詳細なバリエーションをさまざまな色で簡単に作成できます。
8 レビューとUGC(ユーザー作成コンテンツ):Cupshe
ファッション水着ブランドCupsheの成長を支える要因の1つは、ユーザー作成コンテンツやレビューを奨励したことです。
Cupsheの国際的な存在感が米国市場に広がっていくなかで、ECチームは米国のオーディエンスに向けたコンテンツのカスタマイズが必要だとわかっていました。信頼を築き、英語圏のマーケットでのコミュニケーションを行うためです。Cupsheは商品ページにカスタマーレビューを入れられるように、ユーザー作成コンテンツプラットフォームであるYotpoを実装しました。
その結果、わずか数ヶ月で35,765件をこえるレビューとカスタマー画像が生み出され、オンサイトやオフサイトの至るところで宣伝されました。
BVAccelによって開発されたカスタムデザインのレビューウィジェットのおかげで、Cupsheのページはユーザーレビューで埋め尽くされています。その結果、米国での収益は101%上昇し、平均注文額は24%増加しました。
9 送料とまとめ買い:Rhone Apparel
ネットショップにとって、送料無料を提供することはコストの高い行為に思えますが、それでもやはり売り上げを向上させるための効果的な方法であることも事実です。約80%の消費者は、オンラインショッピングを好む理由として送料無料を挙げ、約60%は送料が高すぎたら注文をキャンセルすると言っています。また、39%は送料無料のオプションが見当たらなければカートを放棄すると言います。
送料無料を提供しつつ利益を得るために、メンズプレミアムブランドのRhone Apparelは、人気のあるアイテムをキットとしてまとめることを始めました。この戦略により、理想的な配送コンテナにフィットするよう、サイズをコントロールできます。また、出荷基準を最適化し、コンバージョンとユーザー1人当たりの収益を増加させます。そして最後に、複数の商品を購入する際の特別価格によってお客さまに貢献します。
10 インスタグラムで直接購入:Gymshark
急成長しているフィットネスブランドのGymsharkは、フィットネスの導師ともいえるブランドアンバサダーや世界を股にかけるポップアップショップツアーのおかげで、グローバルなセンセーションを巻き起こしました。彼らのEコマースサイトはモバイルユーザーを念頭に作られ、ページの下までスクロールするとインスタグラムショッピングが統合されています。
このユニークな機能により、ビジターはインスタグラムで宣伝されている商品を見て、数回クリックするだけでEコマースサイトからの購入が可能になります。
11 レトロな写真とファッション:Chubbies
メンズカジュアルブランドのChubbiesは、お父さんからのお下がりを祝福するというミッションによってスタートしました。ブランドを有名にした履き心地のいいストレッチショーツの売れ行きが好調だったため、会社はすぐにシャツ、コート、下着にまでラインを拡大しました。
レトロでお父さん感のあるブランドイメージを売るために、多彩なカラーリングとユーモラスなイメージや写真をサイトに使い、ターゲット層の注目を集め続けています。
ブランドの遊び心に満ちたメッセージはSNS上でのストーリーテリングにも反映されています。以下のビデオでは、EコマースチームがChubbiesの服を着ながら、おちゃらけています。
Eコマースの急速な成長を受け、Chubbiesは米国内で10カ所以上の実店舗をオープンしました。
12 大リーグやNCAAとコラボしたカスタムネットショップ:Johnnie-O
急速に拡大しているプレミアムメンズブランドのJohnnie-Oは、ただ高品質なアパレルをオンライン販売しているのではありません。ネットショップでの注文の際に、好みに合わせて商品をカスタマイズできるようにしています。MLBやNCAAとのコラボにより、Johnnie-Oブランドのファンたちは、好きなチームの刺繍をほどこしたシャツを、わずか2週間で配送してもらえるのです。
13 インスタでブレイク!:17kg(イチナナキログラム)
インスタのアカウントがのフォロワーが50万人以上いる大人気のプチプラレディース17kg(イチナナキログラム)。ラ・フォーレ原宿に実店舗をオープンするなど人気に拍車がかかっています。
アパレルECサイトを際立たせるベストプラクティス
AI、AR、カスタムオーダー、ロイヤルティ特典など、最高のファッションECサイトには、共通する部分がたくさんあります。なにより、彼らはみな最新のテクノロジーと革新的なユーザーエクスペリエンスを用いて、オンラインのお客さまを虜にし、育成しているのです。
オンライン、オフライン、オムニチャネル、いずれの状態であっても、彼らはブランドメッセージがすべてのプラットフォームで一貫しているように気を配っています。それらは、冗談ぽい写真だったり、ユーザーからのレビューだったり、あざやかなカラーリングだったり、すべての面に反映されるのです。そしてなによりも、彼らはあなたがこれから手がけるファッションEコマースサイトの改良に向けて、多くのアイディアとインスピレーションを提供しているのです。
原文:Andrea Wahbe 翻訳:深津望