アメリカ発のホームフィットネス器具「BODYBOSS」。自宅がパーソナルジムになるというコンセプトで注目を集め、クラウドファンディングでは目標額の6倍以上を達成し、堂々の日本上陸を果たしました。現在も購入者数は増え続け、購入者限定のオンラインサロンのオープンや、認定トレーナー制度の開発で、購入者のサポートも欠かしていません。そのBODYBOSSはネットショップのプラットフォームにはShopifyを使用し、出荷・受注業務ではEC自動出荷システム「シッピーノ」を活用しています。
今回はBODYBOSSを販売する株式会社Growの齋藤さんにお話を聞きました。(本記事はシッピーノさんとの共同インタビューとなります。)
──起業したきっかけを教えてください
もともとはサラリーマンとして働いていたのですが、会社が事業縮小で、事業をたたむことになり、本社に行くのか辞めるのかという決断に迫られたのです。実は前から「独立したい」という気持ちがあったので、そのまま仕事を辞めて起業することを決めました。
当時から海外との取引に関わるような仕事がしたいと漠然と思っていたので、関連する本を色々と読みあさりましたね。その中で、海外の展示会に行って海外メーカーと交渉して日本に商品を持ってくるビジネスモデルがあることを知って「面白そうだな」と思っていました。
海外で流行ったものが日本でも流行る「タイムマシンビジネス」というのがあるんですよね。日本で流行るものはだいたい海外から来ていると思うんです。海外から情報を先に持ってきて販売するビジネスモデルは理にかなっていると思いましたし、日本で新しい商品を広めていくことに興味がありました。
最初に、香港のMEGA SHOWというアジア最大級の展示会に行きました。日本にはないものがたくさんあって、そこで色々な商品を見て、メーカーと交渉して仕入れ、日本の展示会に持ってくるというようなやり方で始めました。
──日本に商品を持ってくるのって大変ですか吗?
簡単というと語弊がありますが、海外の企業からすると日本の市場は世界第三位と大きいので、売りたいという思いが強いです。売りたくない企業はほぼないかなという印象ですね。日本でどういう形で販売していきたいのかを明確に伝えることができれば、「ぜひお願いします」と言ってくれる。あとは輸入取引ができればOKですね。
── 資金調達はどのようにやっていますか?
最初は展示会に出展することが多かったので、サンプルを日本に持ち込んで、それを元手に発注するという流れでやっていました。
最近はクラウドファンディングという便利な仕組みができたので、それを活用しています。売れるかわからない商品を販売していくために、在庫をたくさん仕入れるのはリスクがありますが、クラウドファンディングでは予約販売ができて、テストマーケティングもできるので、僕らのようなビジネスをやっている人には活用しない手はないと思います。最近だと、大手企業の商品開発でもクラウドファンディングを活用していますね。
──クラウドファンディング後にはどのように市場に広めるのですか?
クラウドファンディング界でいうと、そこが結構課題なんです。継続的に売れ続けていく商品は全体の5分の1程度だと思います。自分自身が感じているのは、クラウドファンディングは日本初上陸や、他の人が持っていないような新しいものに興味を持つイノベーター、アーリーアダプターが買いたいと思う商品に合っていると思います。
ところが、いざ一般市場に出ると、他の商品と比較されてしまう。一番大きいアーリーマジョリティの顧客層から考えると、いきなり飛びつく人は少なくて、レビューを見てから判断すると思います。他の人が使った感想がない中での戦いになり、波の乗るのがハードルになっていると思います。
弊社では、クラウドファンディングを成功させることも目的ですが、その後もしっかり販売していくことを考えたうえでプランを立てているので、おおよその商品はクラウドファンディング後も継続的に販売できています。
──BODYBOSSについて教えてください
BODYBOSSは自宅でできるフィットネスに特化している商品です。日本を含め世界でホームフィットネスの市場No.1を目指しています。自宅でいつでもどこでもフィットネスができる環境づくりを理念として、器具だけではなく、知識の提供もしています。この2つがあることで、きちんとしたトレーニングができたり、健康に対して主体的に行動ができるようになるので、教育の部分に力を入れていますね。
例えば、私たちには認定トレーナー制度というものがあってパーソナルトレーナーの方に資格も発行してます。現在では全国に70名ほどいます。BODYBOSSの使い方は色々あるのですが、難しそうだから買わないという人も多いので、それを払しょくするためには教えてくれる人や伝道師が必要だと考えはじめました。
全国のトレーナーとチームになって販売をしていきながら、お客さんにトレーニング環境の提供とトレーニングに対する知識をつけてもらうことをワンパッケージで提供していきたいという想いがあって、そこを強化しています。
また、CLUB BODYBOSSという購入者だけが入れる限定のオンラインサロンも開いています。使い方がわからないときや普段の食事の相談、ライブワークアウトなど、自宅にあるBODYBOSSに触れるきっかけを増やしています。色んなコンテンツを出していくことで、BODYBOSSの価値が上がると思っているので、そこを強化しています。
──BODYBOSSを日本で販売することになったきっかけはなんですか?
知り合いの紹介でBODYBOSSのメーカーと出会いました。そこでメーカーと意気投合して、日本のクラウドファンディングで販売してみようとなり、グリーンファンディングで販売を始めました。目標は300万円だったのですが、1,800万円の支援金を集め、約560名にご購入いただきました。
日本でも欧米のように筋トレやフィットネスの市場が年々伸びています。筋トレ器具が売れていたり、アパレルではアスレジャーやフィットネス系のウェアが売れていたり、そういった市場の伸びを感じる中で、BODYBOSSは自宅で簡単に筋トレができる、海外でも成功したプロダクトで、「家がジムになる」として位置付けています。
日本でBODYBOSSがなぜ良いと思ったかというと、海外に比べて家が狭い日本では自宅トレーニングで器具を置く場所がなかったり、騒音が出たりと、日本の住宅市場が抱える問題とマッチしていたので、可能性を感じていました。また、自分自身がフィットネスや筋トレが好きだったというのもあります。
──Shopifyを選んだ理由はなんですか?
元々は無料のプラットフォームや他のカートシステムを使っていました。売り上げも上がっていたのですが、細かいデザインや、データ分析について改善したいという気持ちがあり、常に良いものはないかと探していました。その中でShopifyを知り、2018年から導入しています。
海外の企業を見ていると、Shopifyを使っている企業がかなり多く、BODYBOSSの米国チームも使っていましたし、他の知り合いのメーカーも使っていました。これは使う理由がある、間違いないと思いました。
そこで、試しに2〜3日触ったらすごく良くて、それからずっと使っています。2年前と比べると決済まわりも進化しているし、アップグレードしているところも良いですね。
──Shopifyで好きな機能はありますか?
具体的には、アプリとデータ分析が一番良いと感じています。アプリでは日本語対応のものはまだ少ないですが、海外のものを含めると正直なんでもあるといっていいレベル。これができないというストレスがまったくないですね。
例えば、トレーナーやインフルエンサーにBODYBOSSを使ってもらって商品を紹介してもらうインフルエンサーマーケティングをやっているのですが、そこでアフリエイト機能を構築したかったので、他社に見積もりをとったら初期費用だけで10万円と言われたんです。それがShopifyだと、数十ドルでアプリが入れられる。ワンクリックでインストールでき、その日のうちに使える。むしろ10日間の無料体験もついてくる。中小企業は成功する一手をつかむためにトライアンドエラーを繰り返す必要があるのですが、トライするのに費用と時間がかかると厳しいんですよね。その点、Shopifyは導入スピードも早いので、やっていて楽しいし、売り上げも上がります。
──Shopifyでおすすめのアプリはありますか?
コードが書けなくても簡単にレスポンシブWEBサイトが作れる無料の「Webflow」とShopifyを連携し、ECサイトを制作しています。
Webflowではすごくかっこいいデザインが作れます。世界のホームページのデザインコンテストがあり、入賞作品の多くもWebflowで作られていたりします。また、Webflowで作成したデザインをShopifyのテーマに入れ込める「Udesly」というサービスと連携し、解析結果をもとにECサイトの改善を重ねています。
Udeslyを使うとWebflowで作ったデザインをテーマに連携ができるので、とても革命的でした。1商品のみを販売するLP型のテンプレートでしたら必要ないんですけど、BODYBOSSはコンテンツが多くあるし、デザインをすごく重視していたので、必要だと思いました。
──シッピーノを知ったきっかけは何ですか?
紹介がきっかけです。何かツールを導入するときはコミュニティや知り合いからの紹介をきっかけに導入することが多いです。PIUというコミュニティを運営しているのですが、そこでうまくいった事例をメンバーが取り入れています。新しいことを始めるときに、ネット検索で出荷の外注サービスや委託倉庫を探して導入したことはあるのですが、それでうまくいった試しがほぼないんです。やはり他のEC運営者がうまくいったものを取り入れるのが成功率が高いと思います。そういったことを理念としたコミュニティを運営しています。
──PIUについて教えてください。
PIUはD2Cや物を販売している企業のコミュニティです。2年半前くらいから活動しています。中小企業で社長が1人だと経験も少ないし情報収集も難しいですよね。だから、ノウハウを教えてもらったり助けてもらいながら進めていける仲間がいた方が良いと思うんです。でも、同じような業種でそのような集まりなかったので、そういう環境を作るために立ち上げました。
実際にはじめてみるとメリットがかなりあって、例えば展示会に共同出展できたり、うまくいった事例がすぐに情報として入ってきます。1社でうまくいって、それが再現できたら、全員で導入するくらいの感じなんですよね。一括で導入したら導入特典をつけてもらえることもあります。PIUでも自社ECをやるならまずShopifyが良いよ、自動出荷ならシッピーノというかたちで、それぞれがトライして良いものだけが残っていくような流れがあります。
また、カスタマーサクセスという視点を重視していて、自分が扱っている商品を通してお客さんの生活をいかに向上させるか、社会問題をどのように解決するのかなどに注力しています。それを達成するのに必要なコンテンツを毎月のセミナーでテーマを変えながらお話したりグループチャットで日々情報交換をしたり。コミュニティでみんなで良かったことをシェアしてレベルアップしようというイメージです。
──シッピーノで良かった点などはありますか?
弊社がシッピーノを選んだ理由としては、まずはシンプルで使いやすそうだったという点があります。さらに担当の方がフレキシブルに動いてくれて、積極的に話をしてくれる人で、物流倉庫や別のサービスを紹介してくれたり、人間味にひかれたという点もあります。システム系ってカスタマーサポートに誘導されたり、ドライな部分が多い印象なので、そのあたりもすごく良かったですね。
また、Amazonの送料が高騰している点がありまして、BODYBOSSはサイズが大きいので、FBAに納品するのに2〜3個ずつしか入庫できなかったんです。そうすると納品する送料とお客さんにお届けする送料で2倍かかり、さらにそれが値上げとなるとキツイと思っていました。Amazonを起点にFBAマルチチャネルサービスで出荷していたのですが、そのサービスも値上げしたので、いよいよまずいと思い、自社出荷でマケプレプライムを使った出荷の方が価格的にも下がるということで、倉庫を1つに集約することに決めました。
BtoCはAmazon、BtoBは自社倉庫から出荷していたのですが、それを自社倉庫にまとめました。倉庫を移す際に在庫移動があったので多少の手間があったり、使い方に慣れるのに少し時間がかかりましたが、シッピーノの担当者にたくさん質問をして教えてもらったので問題なかったです。
──自社倉庫で発送するメリットはなんですか?
自社倉庫に替えるメリットとしては、段ボールのデザインや同梱品でブランドを表現できることがあります。また、箱の中にキャンペーンチラシを同梱することもできるんですよね。Amazonではできません。
そして、送料も下げられて、業務的にも効率化できました。単純にFBAに納品してお客さんに配送すると考えると、1個あたり1,000円程度かかっていて、FBAへの納品手数料を合わせると約1,500円でした。それが、自社倉庫からの出荷だと1個800円程度で送れ、送料が半分になりました。それくらいのインパクトがあります。
出荷業務、受発注業務は売れれば売れるほど大変なので、出荷が遅れてお客さんから問い合わせがあると時間がかなりとられてしまうんです。それだけで1日が終わってしまうこともあるので、そこが自動化され、マーケティングや新しい取組みの方に時間をかけられるようになったのも良かったです。
──BODYBOSSの戦略を教えてください
BODYBOSSではオンラインでのバーチャルフィットネスを強化していきたいです。Webサービスとして展開できるように専用サイトの準備を整えています。また、アプリと連携して自分やトレーナーも管理できるような健康管理ができるようにしていきたいです。器具があることを強みに攻めていきたいですね。
最近は商品に出会うきっかけがSNSになっています。新しい商品はSNSで出会うし、欲しいときや比較するときもSNSで検索して調べる。アカウントがないというのは話になりません。なので、弊社のターゲットが一番使っているSNSを強化していきます。UGC(User Generated Contents)という言葉もありますが、ユーザーがリアルに作ってくれたコンテンツが集客と転換率を上げる作用があるので、今はこれを作っていくことでブランドとしての価値を上げていきたいと考えています。
──最後にメッセージをお願いします
自社ECをやって販路を多角的に増やすと、自動出荷のサービスはほぼ必須だと思います。手動でやっていると人的ミスもあるので、最初から出荷業務を仕組み化して自分はマーケティングに時間を費やした方が効率的だと思いますので、Shopifyとシッピーノの組み合わせは非常にオススメです。