「好きなことを仕事にする。」
この言葉は誰もが一度は夢見る言葉です。しかし、実行に移せる人はそう多くはありません。すでにどこかの会社で働いていたらなおさらです。『Cyclism』のダニー・ロビンソンさんは、本業と並行して、サイクリングのウェアや、アクセサリ、さらにはバイクのフレームなどを輸入販売して成功を収めています。まさにこの言葉を体現している起業家です。
アメリカ合衆国オハイオ州で生まれ育ったダニーさんは弟の影響でサイクリングと出会いました。高校を卒業すると、ビールの会社に就職。そこで仕事をしながら、大学にも通うというキャリアを歩んできました。大学では、美術史とアジア研究を専攻。そんな彼には一つの夢がありました。
「アジアの大きい都市で働く」
日本で働きShopifyと出会う
ダニーさんは、大学卒業後に夢を叶えるために、2000年に東京にやってきました。日本で働き、趣味としてロードレースなどの自転車競技を再開。しかし、2009年に「新しい挑戦」がしたくて、本業のIT関係の仕事と両立しながらECビジネスを始めることを決意します。
「最初は何を売るかわかりませんでしたが、趣味であるサイクリングの商品を売ろうと決めました。趣味をビジネスにすれば、自分でもとても楽しめるからと考えたからです。時間がかかり、お金が稼げなくても、楽しめることは大事でした」
最初はショッピングカートやBuy Buttonもない自分で作ったウェブサイト上で「注文するには連絡してね」とだけ書き、販売をしていたと言います。しかし、そのスタイルにも注文が多くなるにつれて限界が来ます。そんなときに出会ったのがShopify。ダニーさんは、「使い方がとても簡単ですぐに覚えられる」とShopifyを最初に使ったときの印象を振り返ってくれました。
本業と両立
当時のダニーさんにはサイクリング仲間のつながりがあったので、多くの起業家が体験するような「最初の売り上げ」の大変さはありませんでした。それでも、自ら自転車愛好家が集う店などに行って、数え切れないくらい多くのプロモーションを行い、今でも大きなイベントなどでは自分から売り込みに行くそうです。
本業と両立しながらのECビジネス。最初は睡眠時間の確保が大変で、「2時に寝て7時に起きる生活をしていた」と笑いながら教えてくれたダニーさん。しかし、ビジネスの両立にネガティブなことはほとんどなく、むしろ本業でのスキルが自分のストアの成長に大きく役に立ったと語っています。
「巨大な会社と話すことがまったく怖くないのは本業のおかげです。また、良いアイデアがあったらとにかく挑戦しろ、失敗を怖がるなということも学びました」
失敗をしても大丈夫。もし、失敗してもそこから学ぶことができる。挑戦しろ。この言葉を胸にダニーさんは突き進みました。
成長を支えたShopifyアプリ
また、Shopifyの数々のアプリもダニーさんの成長に一役立ったようです。「Klaviyo、Privyというアプリをよく使っています。Klaviyoはメールマーケティングのアプリです。例えば、お客様がストアに来てメルマガに登録してもらい、カートに商品を入れたとしましょう。もし、お客様が実際に商品を購入しなくても、Klaviyoは自動的にお客様に購入を促進するメールを送ってくれます。メルマガとしても優秀なアプリだと思います」
*Klaviyoのサンプル画面です。
「Privyは、ディスカウントのオファーなどのポップアップを表示させるアプリです。私のストアでは右下に「割引をゲット!」と表示させて使っています」
「実は、前々からこのような取り組みを考えていたのですが、お客様の迷惑になると思って使っていませんでした。しかし、使ってみると、とても簡単で、すぐに結果が出ました」。
挑戦を恐れるな
『Cyclism』で成功を収めたダニーさん。しかし、これだけでは満足していません。新たに挑戦したいことが次々と出てきます。彼は生まれながらのチャレンジャーなのです。
「誰かにオンラインストアのはじめ方を教えたいです。教えることで自分も多くのことが学べます」と語るダニーさん。「人を助けて、人に教えるのが重要だと思います。そして、人から様々なことを学びましょう。僕は今も常に新しいことを学んでいます」
さらに、ダニーさんは新しいオンラインストアを開く夢も描いています。「何を売るのかは全然わからないですけど、新しいストアを開きたいですね」と笑いながら語ってくれました。「外国人であるということを活かした何かをしたいです。今は、常に何を売るのがベストなのか、心をオープンにして探しています」
「好きなことをビジネスに」。日本でこの言葉を実践できている人は決して多くはありません。仕事や家庭との両立などを考えたら二の足を踏んでしまいそうです。しかし、ダニーさんは最後に「挑戦を恐れるな」と力強い言葉で語ってくれました。
「挑戦することを怖がらないでください。実はあなたが思っているよりも簡単なのです。そして、失敗することを恐れないでください。ビジネスを始めてしまえば、きっと良いことが見つかります」