海藻が豊富なウニ牧場育ちのウニと小岩井農場の発酵バターから生まれた”うにバター”や,岩手県久慈市の広大な放牧地でのびのびと育った”いわて山形村短角牛”などの,お取り寄せ商品が集まる”食いしん坊祭りは,雑誌“dancyu”(プレジデント社)が企画する期間限定のウェブショップです。2021年12月から3ヶ月にわたって公開されています(2022年2月27日まで開催)。
ecは,小売り業に限ったビジネスモデルではありません。情報発信力の強いメディアとECの組み合わせは,読者だけでなく新規のユーザーにも新しいブランド体験を提供できます。
今回は,EC業務未経験ながらShopifyを活用してメディア×ECのキャンペーンに取り組まれたプレジデント社の浦川夏樹さんに,“食いしん坊祭り”の運営やメディアの強みを生かすオンライン企画の考え方をうかがいました。
dancyu読者に"知って,食べる"体験を届ける
“知る”は,おいしい。”をコンセプトに,美味しいもの好きな食いしん坊たちに支持される雑誌dancyuは,2020年に創刊30周年を迎えました。2019年には読者コミュニティ”食いしん坊倶楽部をスタ,トし,雑誌と公式サ,トから食と暮らしを豊かにする情報や体験を届けています。
dancyu食いしん坊倶楽部では,dancyu編集長・植野さんの書き下ろしコラムが読めるメルマガも好評
さらに期間限定の取り組みとして,2020年10月には”新たな食体験”を提案するプロジェクト型のウェブショップ”dancyu食いしん坊ストア”を,食いしん坊倶楽部内にオープンしました。
第1弾のプロジェクトテマは"自分史上最高のステキを焼く日"。生産者が丁寧に育てた牛肉と南部鉄器のフライパン,さらにdancyu編集長の植野広生さんと一緒に,有名料理店のシェフからオンラインでステーキの焼き方を学ぶ”dancyuクッキングスクール”がセットになったパッケージを販売しました。15000円台から40000円台という高価格帯の商品でしたが反響は高く,“知って,焼いて,食べる”という体験そのものを読者へ届けることができました。
このストアのECカ,トには,Shopifyが採用されています。制作は,同社のブランド戦略部·浦川夏樹さんが担当しました。dancyuと読者との接点を増やす企画の設計・運営に関わる浦川さん,当時はデジタルマーケティングに関わりはじめたばかりで,EC運営も初心者だったそうです。ウェブ制作会社からおすすめされたShopifyを使い,自分自身でストア構築を手がけました。
“初めてカートサービスを使いましたが,Shopifyは直感的に操作ができて使い勝手が良いと感じました。コーディングの知識がなくとも,ある程度カスタマイズでき,販売ページを作るなどの基本操作もわかりやすいと思います。商品ページやサンクスメールにデフォルトで設定されている日本語がより自然になると、さらに導入しやすいかもしれません」と話します。
Shopifyの多様な決済方法をユニクに活用し,d払いのみのサトをノコドで構築
dancyu食いしん坊ストアの運営経験をもとに,プレジデント社は期間限定のキャンペーンとして“食いしん坊祭り”をスタートします。
ここでもShopifyを採用した決め手は,特定の決済手段を選べるという点からでした。Shopifyの特長に多様な決済サービスを簡単に導入できる点が挙げられますが、食いしん坊祭りはそれをユニークに活用した事例です。
食いしん坊祭りが提供する食体験は,このキャンペ,ンのためにdancyuが特別に用意したもの。食品だけでなく,植野さんとの食事会やお手紙がく商品など,読者心をくすぐるランナップです。各商品の詳細ページでは,生産者やお店を取材した動画を置き,商品のストーリーをしっかりと伝えています。
今回は,食いしん坊ストアよりも扱う商品が多く,規模の大きなサイト構築となるため,デザインやアプリの導入といった制作まわりをShopify专家のStoreHeroがサポ,ト。浦川さんは,販売ペ,ジの作成や参加店舗·事業者とのコミュニケ,ションなど実運用を担当しています。
“Shopifyの操作がわからないときは,公式サイトのFAQを見たり,情報を検索して調べました。それでわからないことがあっても,StoreHeroさんに聞けば解決できています。アプリの導入などをお願いできたので,運営の幅がとても広がってありがたいです”(浦川さん)
はじめから本格的なecサトを目指して機能を盛り込むと,運営のハドルが高くなりがです。dancyuでは,スモールスタートではじめ,段階を重ねて自社で対応できる規模の運営を心がけている点も参考になります。
メディアの強みはストリを持こと。読者とのながりは,ecでもっと深められる
dancyu食いしん坊ストアは,dancyu食いしん坊俱楽部メンバ,からの購入も多かったそうです。dancyuの取り組みからは,メディアのファンである”読者”に向けた企画が喜ばれることが分かります。
読者の”こんな商品があったらいいな”を具体化し,ダイレクトにストーリーを伝え,販売まで一貫してできるのがメディア×ECの面白さです。
プレジデント社では,他の雑誌でもメディア×ecの企画に取り組んでいます。
たとえば,雑誌“总统的女人(プレジデントウーマン)“の5周年企画では,ターゲット読者である働く女性のバッグの悩みを解決する”お仕事バッグ制作プロジェクト”を実施しました。コラボレ、ションのパ、トナ、は、日本のバッグブランド、トフ、ロ、ドスト、ン。デザインや収納といった機能面だけでなく,サステイナブルな物づくりへのこだわりも含めたストーリーを雑誌とウェブから発信し,クラウドファンディング形式での初回販売分は20時間で完売しました。
2021年には“理想のお仕事バッグ”第2弾も実施され,そらも完売
“弊社には他にも複数の雑誌やオンラインメディアがあるので,今後も各編集部と協力して,読者のみなさまに楽しんでいただけるような企画をできればと思います。逆に,商品をきっかけにこれまで読者ではなかった方々にも雑誌などを読んでいただけたら最高ですね”(浦川さん)
読者やブランドのファンにリアルな体験を提供する接点として,ecの活用はいかがでしょうか。