ビジネスを始めることは大変ですが、やりがいのあるプロセスです。名前を決め、サイトを作成し、商品を調達して、最初のお客さまを得るというプロセスは、自分の会社を運営するうえで必要不可欠であり、また同時に楽しい部分でもあります。
ただ、ウェブサイトやロゴを作れば、「ホンモノ」になるのでしょうか? さらに重要なことに、何か問題が生じた時にビジネスオーナーとしてのあなたはしっかり守られるでしょうか?
けっして魅力的な仕事に分類されるとはいえませんが、事業を法人化することが、ビジネスの基礎となります。法人になると、行政から認められた組織として確立できます。これにはどんな意味があるのか、なぜそうするべきなのか、どこから始めたらいいのか、それをこれから見ていきましょう。
なぜビジネスの種類・形態が重要なのか?
ビジネスの種類・形態次第で、課税形態、法的責任、資金調達の方法などが決まってきます。ほかにもさまざまな要素に影響します。
事業を法人化するメリットはいろいろありますが、重要なのは以下の点です。
- 個人資産を保護する
- オーナーシップの移譲が可能になる
- 税金が低くなる可能性がある
- ビジネスファンドの難易度が下がる
- オーナーの個人状況とは別に信用評価が得られる
- 退職プランの作成が容易になる
それぞれのビジネスの種類・形態は、いくつかの要素のうちでもとくに個人の責任、オーナーシップ、課税、資金集めの点において、異なるメリットを提供します。
ビジネスの種類・形態
ビジネスはそのタイプごとに利点がありますが、ある種のビジネスに適した会社組織というものがあります。また、事業の成長にともなってビジネス・ストラクチャーを変えていくこともできます。ただし、この場合には行政的な手続きがさらに増えます。
個人事業
個人事業は、事業とその運営者との間に法的な線引きがされていない非法人的なビジネス形態です。間違いなく一番単純なビジネスの種類・形態であり、立ち上げや管理も一番シンプルです。
初期予算が少なく、責任リスクを低減したい新規のeコマースビジネスの場合、個人事業の形態をとることが多いです。個人事業は、後々ほかのビジネスタイプに転ずることができ(実際のところチームを増やす場合にそうする必要があります)、立ち上げにおいてはもっとも早く簡単です。
個人事業は、被用者のいないビジネスとみなされます。給与を支払う従業員がゼロで、米国ではもっとも一般的なビジネス形態です。スモールビジネスオーナーの約40%は、従業員を雇っていないビジネスをメインの収入源とし、60%はサブ的な収入源として活用しています。
個人事業のメリット
- 安い税金:LLCの場合は申告が2回に分かれることもありますが、個人事業の場合は申告は1度だけです。組織に対してではなく、オーナー個人に課税されます。
- 事業の完全なコントロール:パートナーや投資家がいないため、すべてのビジネス判断を自分で下すことができます。
- 今後のストラクチャー変更が容易:個人事業として開始した場合でも、その形態にこだわる必要はありません。準備が整えば、今後いつでもほかのビジネスタイプに変更できます。
個人事業のデメリット
- 個人の責任:事業を運営している個人が税金の申告をする必要があります。事業と個人の間に区別がないため、事業で生じたことのすべての責任が個人にかかってくるため、その点がリスクといえます。個人資産が危険にさらされる可能性があります。
パートナーシップ
パートナーシップは、1つの事業を2人あるいは数人で所有する形態です。個々のオーナーやパートナーは、資金、資産、労働、スキルなどを提供することで事業に貢献します。事業から得られる利益は共有されます。
パートナーシップには2種類あります。
- 一般パートナーシップ(GP):事業は均等に共有されるか、または事前に書面化され同意された割合で共有されるとみなされます。
- 限定パートナーシップ(LP):特定のパートナーは、権限と責任の両方が制限されます。
パートナーシップは、パススルー課税モデルをとります。事業自体ではなくオーナーに対して課税されるということです。事業から得られるパートナーそれぞれの収入を基準として課税され、事業収益に対して課税されるわけではありません。
パートナーシップのメリット
- 責任の分散:「数の力」についての格言がありますが、これはパートナーシップにも当てはまります。すべての責任を1人で背負うのではなく、パートナーと分かち合うことができます。また、さまざまなケースにおいて資本が得やすくなります。
- 立ち上げと管理が容易:公式なパートナーシップの締結は比較的簡単です。また継続的なマネジメントの観点では、ほかのビジネス・ストラクチャーと比べると税務申告用紙が少なく済みます。
パートナーシップのデメリット
- パートナー間の衝突:すべての決断においてパートナーの間で意見が一致するということはないでしょう。妥協が重なるうち、やがてオーナー間や会社内で衝突が生じます。パートナーシップの契約をするときは、あなたとパートナーが同じ認識をもっていることをしっかり確認してください。
- 個人の責任:パートナーシップの課税は個人と事業の線引きを明確にはしないため、オーナーは個人リスクが高まります。また、事業体ではなく個人が納税するため、未払金が増えるおそれもあります。
法人
法人には個人とは異なる法人格が与えられるため,オーナーは特殊な事情がないかぎり個人的に責任を負うことはありません。その反面、企業の所有や運営に関わる人ではなく法人自体がリスクを負うことになります。
また、ほかのビジネスの種類・形態と比べると、オーナーの変更は楽です。ほかのビジネスタイプ同様、法人は所在地を管轄する指定の場所で登記することになります。株主にかかる税金とは別に、法人は各自治体ごとの税金および国税を納めます。
法人税は、個人にかかる税より安くなることもありますが、自治体や状況によって異なるため、個人事業/LLC/パートナーシップと法人税を比較してみるのも良いでしょう。多くの場合、法人のほうが税率が安くなりますが、税理士等の専門家に相談することをお勧めします。
中小企業の株主は、2度課税される場合があります。とりわけ、法人は利益に対して課税され、株主は個人の収益として株式の利益に課税されます。
法人のメリット
- リスクの低減:法人化のおもなメリットがこれで、会社の資産や借金に関係なく、株主の個人資産は保護されます。たとえば、消費者がリテール会社を訴えて勝訴した場合、会社には支払い義務が発生します。会社に支払いに十分な資金がなくても、支払い義務は株主に転嫁されませんので、差額を補填する必要はないのです。
- 株式による資金調達:株式会社の場合は、株式によって資本を調達できます。キャッシュが不足しても株式を売れるため、安定性と信頼性の面で従業員にとっての魅力にもなります。
法人のデメリット
- 法人化や組織維持のための業務が増える:一般的に言って、法人の組織化と管理はほかのビジネス組織と比べて困難です。さまざまな設定事項があり、法的な組織として管理のあらゆる段階で慎重になる必要があります。
- 個人責任は完全にはなくならない:会社の会計がずさんだった場合、想定外の個人的責任を問われるかもしれません。弁護士が会社を訴え、不適切な会計が証明されると、法人として不適格であるとみなされます。言い換えると、あなたは個人資産の保護という特権を失うのです。
有限責任会社(LLC)
有限責任会社(LLC)は、パートナーシップの簡便さと法人の責任保護の仕組みを混在させたハイブリッドなビジネスの種類・形態です。法律上は、法人に属します。
メンバーと呼ばれることもあるオーナーは、LLCの利益に対して直接税金を払います。LLC自体は、法人としての税申告はしません。2人以上のメンバーがいるLLCは、希望があれば、パートナーシップか法人のような税務オプションが可能です。このような税制選択により、ビジネスと個人の税金の区別がなくなります。
LLCは比較的新しいビジネスタイプであり、人気が高まっています。IRSのデータによると、ほかの会社組織は1980年代以降減少しているのに対し、LLCは上向き傾向にあります。
LLCは、ビジネスを始めたばかりの1人創業者にとって、すぐれた形態といえるでしょう。
有限責任会社(LLC)のメリット
- 管理がシンプル:株式会社と比べて会計において要求されることが少なく、利益配分の制限も少ないです。初期ステージの中小事業者にとってわかりやすくシンプルなビジネスの種類・形態といえます。
- 個人保護:LLCの場合、個人資産が保護され、責任が減ります。
有限責任会社(LLC)のデメリット
- すべてのビジネスで可能なわけではない:LLCの体制をとれるビジネスタイプが決められている場合があります。銀行や保険会社などは、一般に禁止されているビジネスです。外国のLLCに特別に適用されるルールもあります。
- 各自治体の税制:LLCのメンバーは、その人数や定款、法令や条例などに応じて、追加の書式が必要になる場合があります。
ビジネスの種類・形態の選び方
新規ビジネスに適した形態を選択するのは、簡単ではなく、公式などもありません。多くのオンラインリテーラーは個人事業かパートナーシップとして事業を始めています。そして、会社の潜在的な責任を判断したうえで個人資産の保護という観点が魅力的になるか、成長のために株式を売ることが可能になるかのタイミングで法人化という動きに移ります。
最終的には、どのビジネスの種類・形態があなたに適しているか弁護士に相談するのがもっとも安全な方法ですが、取り急ぎ考慮しておきたい点がいくつかあります。
個人の責任
法人化のメリットの1つが、個人とは別個の法人格を創出できる点です。その結果、個人のリスクを減らせる場面が多く出てきます。株式会社などのビジネスの種類・形態は、オーナーに対して強い保護力を提供します。パートナーシップなどそのほかの組織ではそれよりも弱い個人保護となります。どの程度の個人的な責任を負うことになるのかを判断しましょう。
従業員の雇用
従業員を雇用している、あるいはその予定がある場合は、それが形態の選択に影響します。個人事業としてスタートしても、スタッフを増員する際にビジネス・ストラクチャーの変更が必要になる場合があります。
パートナーの協力
同様に、ビジネスパートナーを想定しているなら、そのような組織形態を支えられるビジネス・ストラクチャーを選択する必要があります。個人事業ではなく、複数のメンバーによるLLCや、パートナーシップ、株式会社を検討することになるでしょう。
ビジネスファンド
商品開発や店舗の拡張、在庫への投資、その他必要な費用のために、資金集めが必要になるときがいずれ来るかもしれません。eコマースのための資金調達にはさまざまな方法があります。それが成功するかどうかは、いくつかの要素によって決まりますが、そのうちの1つがビジネスの種類・形態と事業履歴です。
法人化することによって、信用と財務履歴の構築ができます。貸し手や投資家など、資金調達の要となる人たちは、出資するかどうかを決定するにあたってこれらの情報を参照します。安定した履歴と信用記録は、資金と低金利の確保に役立ちます。
ビジネスを法人化する
実際の法人化プロセスは、行政的な手続きを必要とします。自分ですべてをおこなうこともできますし、プロのアドバイスを得たり、プロセス全体をアウトソーシングしたりすることも可能です。専門家を雇うなら、Shopifyエキスパートで有能なプロフェッショナルや消費税の専門家を探してみてください。
ビジネスを法人化するにあたっては以下のステップを経る必要があるので簡単に確認しておきましょう。
法人化する場所を選ぶ
どこで法人登記をするか、ある種のビジネスオーナーにとっては明快です。ローカルで販売と運営をおこなっているなら、ビジネスを営んでいるエリアで登記することになるでしょう。国をまたぐような販売計画をもっている場合、考慮すべきことが想像以上に増えます。
地域によって,それぞれのビジネスの種類・形態ごとに異なる要件や申請書,税制,行政上の制限などが存在することもあるので、あらかじめ確認しておきましょう。
会社名を決定する
会社名あるいはブランド名などによって、あなたは公に知られることとなります。たとえば、ゼネラル・エレクトリック社を「GE」とすることが多いと思いますが、実際の社名はGeneral Electricです。
名称の決定で困るようであれば、アイデアを得るために売れるストア名の付け方ガイドをご参照ください。いいアイデアが思いついたら、すでにだれかが登録していないかを調べるために自治体のデータベースで検索しましょう。
法人番号を申請する
法人番号は、政府への書類の提出や税金申請などで使用するIDナンバーのようなものです。これによって行政があなたのビジネスを認識します。法人化の際には、この法人番号が発行されます。
書類や定款を提出する
会社名が決まって準備ができたら、書類を公的に提出します。会社を作る際には定款が必要です。基本的に、これらの行政書類に記載されるのはあなたの会社に関する情報です。創業者、パートナー、メンバー、株主などを記載します。この書類によって、あなたのビジネスが公式なものとなるのです。
Shopifyで次のステップへ
ビジネスを法人化すると、政府に公式に認められることになります。個人資産を保護し、会社の信用と歴史を築き上げ、場合によっては低率の税金を享受できます。しかしビジネスを法人化する最大のメリットは、目に見えない部分にあるのかもしれません。法人化によってあなたのアイデアは現実のものとなります。そしてそれ以外のことは、すべてあなた次第です。
原文:Mark Hayes 翻訳:深津望
よくある質問
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