ECサイトのオーナーにとって、メールマーケティングは最もコストパフォーマンスの高いマーケティング手法のひとつです。そして、第三者運営のプラットフォーム(SNS等)に依存せず、お客様と直接つながることができる数少ないマーケティングチャネルのひとつでもあります。そのため、多くの新規および成長中のオンラインストアにとって、メール配信は最優先して取り組むべき施策となっています。
しかし、やり方を間違えてしまうと、せっかく収益貢献度性の高いチャネルが無駄になってしまいます。
優れたメールマーケティングは、タイムリーで、適切で、パーソナライズされたもので、まずは購読者に送ることができるメールの種類を理解する必要があります。あなたが配信するメールは、大きく次の3つのカテゴリーに分類できます。
- トランザクションメール:注文内容確定の通知や購入後の更新情報(発送通知含む)など
- プロモーションメール:キャンペーンの案内、新製品のお知らせ、ニュースレターなど
- ライフサイクルメール:お客様の行動に基づいて送信するメール(例:購入が完了しなかったお客様へのかご落ちメールなど)
参考:Email Marketing Best Practices to Boost Every Campaign (2021)(英語)
メールマーケティングをゼロからはじめる人にとっては、想定されるシナリオ毎にメールを作成・最適化していくことは大変な作業だと思います。それぞれのカテゴリーにおいて、送信可能なメールのパターンは数多くありますし、既存の企業が実施しているキャンペーンをざっと見ただけでも、そのバリエーションの多さに途方に暮れてしまうかもしれません。
しかし、あなたが送るメールは、件名やプリヘッダーテキスト、本文、ビジュアル、CTA(コールトゥアクション=次にとってもらいたいアクション)などの共通する「パーツ」から構成されていることを忘れないでください。パーツごとに効率のよいとされる(効果が実証されている)方法を理解することで、(ほぼ)すべてのメールから良い結果を得られるようになります。
メール開封前の重要な要素
マーケティングメールの本文だけに注目するのは、メール担当者が犯しがちな間違いのひとつです。メールの内容はもちろん重要ですが、購読者にメールを見てもらうためにはまずメールを開いてもらう必要があります。そのためにあなたが意識すべき大切なポイントが下記3つです。
- 件名とプリヘッダーテキストに何を書くか
- いつメールが受信トレイに届くか
- 購読者リストをどのようにセグメントするか
開封される件名
メールの件名は購読者が一番最初に目を通す部分であり、メールを開けてもらえるかどうかを左右する最も重要な要素です。件名が興味をひくものでなければ、どんなに優れたコンテンツを用意していたとしても、あなたのメールは購読者の受信トレイの中で埋もれてしまいます。
だからこそ件名は多くの企業が考えているよりも慎重に検討する必要があるのです。その重要性から「どのような件名が効果的か」についてはすでに多くの研究が行われているので、ここからは代表的なポイントをいくつか見ていきましょう。
件名からメール本文の内容が推測できるよう、訴求ポイントをきちんと記載しましょう。(興味をひくために多少はOKですが、)抽象的なキャッチコピーに頼りすぎて購読者が開封すべきか悩むような事態は避けましょう。
メールを受信する環境にもよりますが、確実に表示されるのは件名の最初の10~15文字程度、プリヘッダーテキストを含めても50~70字くらいです。一番伝えたいことが見切れてしまわないようコンパクトにまとめましょう。
読んでもらいたいがために過剰な表現を使用したくなるかもしれませんが、開封率は購読者の行動を促すことができてこそ意味をもちます。メールの内容が件名からかけ離れた場合は配信を停止されてしまう確率があがるので、大げさな表現は避けましょう。
質問形式の件名が購読者の興味を引きやすいことは、すでに多数の研究から判明しています。疑問形を用いた文言で、続きが気になる購読者を効率的に本文へと誘導しましょう。
表現に悩むようであれば、どのような件名が購読者の心に響くか実際にテストしてみましょう。件名のA/Bテストを行うことで、開封率の改善につながけるためのポイントが見えてきます。
メールを送信する最適なタイミング
メールを「いつ」送信するかは、何を送るかと同じくらい重要です。せっかく配信しても他のメールに埋もれて読んでもらえないケースなどがあるからです。最適なタイミングを見つけるためには、お客様を知り、何が効果的かテストすることから始まります。
オンラインストアの場合、「お客様の購買意欲が最も高まる時間帯」を把握することがメールマーケティングの出発点となります。あなたのショップで1日のうちで最も商品が売れる時間帯はいつですか?こうした情報は購読者の習慣やスケジュールを知るためのものであり、メールマーケティング戦略の参考になります。
あなたのECサイトがGoogle Analyticsのeコマース設定を導入していれば、上記のような購入ピークを簡単に追跡することができます。Google Analyticsを利用していない場合は、Google Analyticsのeコマース利用についての記事(英語)をご覧ください。
尚、注文確認などのトランザクションメールは、購入後すぐに送信するのがベストです。ライフサイクルメールはお客様の特定の行動に基づいて送信されるので、効果的に送信するためには少しテストが必要です。例えば「かご落ちメール」は、お客様がカートを放棄した理由や売上を回復するための戦略によって送信する最適なタイミングが異なります。
メールセグメンテーション
セグメンテーションというと難しく聞こえるかもしれませんが、ここでポイントとなるのはメールの購読者を様々な切り口で分類し、特定の属性ごとにグループを作ることです。ほとんどのメールマーケティングサービスは、購読者のセグメント化ができるツールを提供しているので、積極的に活用しましょう。
セグメント化することで、購読者一人ひとりのニーズテイストにあったメールを適切なタイミングで送ることが可能となり、それぞれのメールがお客様の行動につながる確率が高くなります。購読者リストのセグメンテーションは、以下のようないくつかの要素に基づいて行うことができます。
- お客様の属性(年齢・性別・職業・家族構成など)
- 特定のトピックや商品に対する興味
- 居住地
- エンゲージメントの度合い(見込み顧客、長期優良客など)
ここで「エンゲージメントの度合い」でセグメント化した場合の具体策を見てみましょう。
まだ一度も購入したことのない新規登録者を対象としたメールセグメントを作るとします。このセグメントでは、信頼関係を構築して初めての注文につなげることが目的なので、メールに初回割引を含めることが効果的です。
頻繁に購入してくれる長期的な優良顧客には、上記とは別のセグメントを設けるべきでしょう。このようなお客様は割引をしなくても購入していただけるので、感謝の気持ちを伝えたり、興味のある商品を紹介したりするほうが反応が良いです。
メールコンテンツのベストプラクティス
魅力的な件名をつけ、配信タイミングとセグメントの最適化ができたら、マーケティングメールの肝である本文にエネルギーを注きましょう。メールの本文には、件名で明記した訴求ポイントの詳細を伝える役割がありますが、内容のみならず「どのように伝えるか」も重要になります。言い回しやメッセージの形式など検討すべきことは多岐にわたるので、下記にていくつかの重要なポイントを見ていきましょう。
読まれる見出しを作る
メールのボディコピーは、件名で興味をもってくれた購読者の期待に応えるものでなければいけません。どんなにキャッチーな件名であっても、購読者の読みたい内容が書かれていなければ意味がありません。
まず第一に、メールの本文はシンプルで説得力があり、ブランドイメージに沿ったものでなければなりません。
メールのボディコピーはあなたが促したい行動に購読者を短期間で誘導する必要もあるので、意図的な情報の階層化が大切です。最も重要なメッセージ(メールを送る目的)を先頭に置き、後から詳細を説明するようにしましょう。
メールの内容を読みやすくするために、下記ポイントを意識して本文を構成しましょう。
- メールの件名とマッチしたメッセージのみを訴求する
- 短い段落、余白の積極的な活用で読みやすさを追及する
- 必要な情報が瞬時に分かるよう、見出しや箇条書き、罫線などで内容を階層を明確にする
- 重要なフレーズが目立つようにフォーマットオプションを戦略的に使用する
- (フォントサイズを大きくする、テキストを強調するなど)
付加価値のある画像を取り入れる
画像はあなたのメッセージを視覚的に訴えることができる優れたツールです。ただし、メール内に取り入れることで読み込み時間が長くなったり、デバイスによっては表示崩れが生じたりと注意が必要です。むやみやたらに使用せず、訴求ポイントと合致したイメージのみを厳正して配置するようにしましょう。
また、採用する場合はファイルのサイズも意識しましょう。多くのメールマーケティングサービスは、1MB以下の画像を推奨しています。プロバイダーによっては、受信者の連絡先にない送信者からの画像をブロックする場合もあります。こうした事態も想定して、画像には必ずALTテキスト(代替テキスト)を追加してください。画像がきちんと表示されなかった場合でも、購読者はどのような画像がメールに含まれているのは知ることができ、興味があればクリックして見ることができます。
モバイル端末向けのレスポンシブデザイン対応
スマートフォンやタブレットなどのデバイス環境に応じて、自動的に画像や文字などのサイズを調整するレスポンシブデザインメールは、今やできて当たり前のものとなっています。2019年初頭の時点で、モバイル端末でのメール開封は全開封数の約60%を占めており、この割合は年々増加しています。モバイルコマースの台頭により、お客様はスマートフォンで商品を見たり購入したりすることに抵抗がなくなってきており、ウェブサイトでのレスポンシブデザイン対応の流れがメールの領域にも浸透してきています。
そのため、メールマーケティングプラットフォームも今はほとんどがレスポンシブデザインの導入をサポートしています。テンプレートの選択や、モバイル最適化のオプション選択で、簡単にレスポンシデザイン対応したメールを作成することができます。
効果的なCTA(コールトゥアクション)の使用
CTAは、あなたがメールを読んでくれた購読者にとってもらいたい次のステップと、その手段(通常はリンクやボタン)のことを指します。CTAの目的は「購読者の行動を喚起すること」で、つまりはあなたのメールのゴールを意味します。具体的なアクション(特定の商品を購入や購入商品のレビュー記入など)に購読者をメール内で誘導するために、CTAの改善につながるヒントをいくつか見ていきましょう。
1通のメールにCTAをいくつも設置すると、読者を混乱させる危険性があります。最終的な成果を高めるには、1通のメール内で提示するCTAは1つに絞りましょう。
何事もそうですが,お客様に行動してもらうためには緊急性を感じてもらうことが大切です。具体的には,セールの「期間限定」、商品の「在庫数限定」、「今すぐ購入」や「今日から始める」などのフレーズを活用して、購読者の行動を促しましょう。
CTAは他のメールコピーの中でも目立つようにする必要があります。テキストリンクではなくボタンの画像を使い、明るく対照的な色を使うことで、CTAを見失わないようにしましょう。また、ボタンは余白の多い場所に設置し、できればメールの最下部への設置は避けましょう。
Civic社のメールは、遊び心のあるコピーを使いながらも、購読者の行動を促すような内容になっています。
メールパフォーマンスの測定
メール配信後に効果を測定することは、あなたのメールマーケティングを改善する(英語)唯一の方法で、最も重要なベストプラクティスです。メールパフォーマンスの測定は最近は容易に行うことができるので、適切な指標を設定してモニタリングしていきましょう。
メールマーケティングで把握すべき代表的な指標には下記4つがよく挙げられます。
- 開封率:メールを開封した購読者の割合
- バウンス率:メールが受信箱に入らなかった割合
(テクニカルエラーやスパムフィルター、購読者のメールが無効の場合に発生) - クリック率:メール本文中のリンクをクリックした購読者の割合
- オプトアウト率:メールリストから退会した購読者の割合
効果測定においてはあなた自身が採択した指標が何よりも重要ですが、他のEC企業とあなたのパフォーマンスをベンチマーキングをすることも検討してみてください。客観的な評価基準をもつことは、ビジネスを成長させるための目標設定にもきっと役立つでしょう。
マーケティングメールを最適化する
あなたはすでに、独自の目標や手段を用いてさまざまなマーケティングメールを送信しているかもしれません。しかし、本記事内で挙げたヒントやベストプラクティスはほぼ普遍的で、あらゆる種類のメールに適用可能なので、この機会にあなたのメールマーケティングを再点検してみてください。件名やコンテンツを見直して配信効率を高めることで、あなたのメールはより多くの売上につながるでしょう。
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原文:Mark Macdonald 翻訳:坂本真紀