アントレプレナーという言葉を聞いたことがあるでしょうか。起業を考えている人なら目にしたことがあるかもしれません。
この記事では、近年日本でも注目され必要とされてきているアントレプレナーについて、求められるビジネススキルやパーソナルスキルを紹介します。
目次
アントレプレナーとは
アントレプレナー(英語:entrepreneur)とは、ゼロから事業を起こす人のことで、日本語では「起業家」という意味で使われます。アントレプレナーの日本語の類義語には、創業者などがあります。
アントレプレナーは「経営者」などと混同されがちですが、起業家は自分で新しい事業をスタートする人を指し、独創的なアイディアや革新的な技術を使うなどして、自身で新しいビジネスを開拓します。
アントプレナーの語源は、フランス語のentrepreneurにあり、元々は「仲介人」や「貿易商」という意味で使われていたそうです。
アントレプレナーが求められる背景
これまでの日本経済は終身雇用や年功序列をベースに発展してきました。しかし、90年代以降日本の経済は停滞し、そういった制度も崩壊しつつあります。
近年ではAIやIoTなど新たなテクノロジーも次々とうまれ、消費者のニーズも多様化してきて、製品ライフサイクルが短縮するなど、より速いスピードのビジネス創出が求められています。
グローバル化や社会問題への意識の高まりなども、ハードルの高い事業に挑戦し社会の未来を見据えることができるアントレプレナーが求められる背景となっています。
加えて、2020年の新型コロナウイルス感染拡大によりデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進が進み、ビジネス環境にも抜本的な変化が起こっています。こうした変化の中でも、ビジネスチャンスを察知し挑戦するマインドを持つのがアントレプレナーです。そんなアントレプレナーシップ(起業家精神)を持つ起業家が、従来の常識や価値観にとらわれず新たなビジネスモデルや価値観を創造し、日本経済を切り開いていってくれることが期待されているのです。
アントレプレナーに求められるスキル
アントレプレナーになるために資格などは必要ありませんが、ゼロからビジネスを創出するために必要となるスキルがあります。起業家になるには、以下のようなスキルが求められます。
1. 優れたマネジメントスキルと力強いリーダーシップ
アントレプレナーとして新しいビジネスを創出するにはリーダーシップが必要です。チームやビジネスパートナーなど人々をまとめ、ビジネスのゴールに向かって引っ張っていけるような、強いリーダーシップが求められます。
また、人々と同じ目標に向かうためには、それぞれの意見や価値観なども理解しながら運営していくマネジメントスキルも大切です。
2. 発想力と行動力
革新的なアイディアやビジネスモデルを生みだす発想力は、多くのアントレプレナーが持っているスキルです。しかし、自らの発想でなくとも、世の中で求められているものを鋭く察知したり、他人の何気ないアイディアからヒントを得て行動力を発揮し、ビジネスを立ち上げて成功させたアントレプレナーも数多くいます。
3. コミュニケーション力と人脈の構築力
ひとりで起業しようと思っても、限られたリソースの中で目標を達成するにはコミュニケーションや人脈が必要となります。アントレプレナーには自分のアイディアや企画に賛同し協力してくれる人を増やし、他者をまきこむことができるコミュニケーション力と人脈の構築力が欠かせません。そのため、交渉スキルもアントレプレナーには必要な能力です。
4. ポジティブシンキング
誰もやったことのないビジネスには失敗やリスクはつきものです。そういった局面でも悲観的にならず、ポジティブにトライ&エラーで進んでいくことのできる前向きさがアントレプレナーには求められます。
5.責任感
ポジティブシンキングと同時に、責任感も必要です。失敗したときに自分の力を過信するあまり問題点を直視せず、他人のせいにするのはアントレプレナーではありません。自らの判断や行動に責任を持ち、問題点の解決に努めることが大切です。
6. 未来をイメージする力
アントレプレナーは未来を見据えてビジネスを考えます。目先の利益や成功にとらわれず、自分が何を目的に起業したのか、ゴールをしっかりと思い描く力があります。ビジョンが明確になると、いつ何をすべきかもはっきりとして、事業の推進力も高まります。
7. 社会に対する志
いくら明確なビジョンがあっても、それが個人的な目的だけであればアントレプレナーとしての成功は難しいものとなります。社会の課題や誰かの問題を解決したいという気持ちが大切です。課題解決への思いと自らの原体験や信念が重なったとき、大きな志となってアントレプレナーとしての強力な推進力になります。
資格などは必要のないアントレプレナーですが、こういったスキルに加え、目指すビジネスに関する知識や学び続ける姿勢ももちろん必要です。アントレプレナーにはビジネスに対する情熱と自他への精神性が必要だと言えるでしょう。
8. チャレンジ精神
新規事業を立ち上げるのには、勇気やチャレンジ精神が欠かせません。アントレプレナーは、新しいことを始めることに対してハードルが低く、また、不安よりも好奇心ややりがいを感じやすいため、アントプレナーの中には既に事業を成功させていても、新規事業をはじめる「連続起業家」と呼ばれる人たちも多く存在します。
アントレプレナーになるには?
資格などがないからこそ、アントレプレナーになろうと思ってもどこから手をつけたらよいか分からないかもしれません。もしまだ起業に興味をもったばかりなら、準備段階として市場調査やアントレプレナーについて学ぶことも考えてみましょう。
例えば、参入する業種によっては資格が必要となる場合もあります。自分がどんな事業をはじめたいのかを考え、その業界で役立つ資格を取得しながら情報収集をすると、後々役立ちます。また、起業に関する書籍、セミナー、オンライン講座など、手軽に学べる機会は多くあります。ビジネスのビジョンがまだ明確でない段階なら、起業について具体的に学ぶ前に、アントレプレナーとしての考え方など、アントレプレナーシップについて学ぶのもおすすめです。
では、もっと具体的な行動に移ろうと思ったとき、アントレプレナーになるにはどんな方法があるのでしょうか。
起業する
一番わかりやすく、早くアントレプレナーになる方法です。
起業するためには、ビジネスのアイディアとビジネスモデルを考え、資金調達や手続きなどを進めます。資本金1円でも起業は可能ですが、口座を開設できない、融資が受けられない、社会的な信用が低くなるなど、起業後にデメリットとなる恐れがあります。
会社を設立する場合は、会社概要の決定・定款の作成認証・資本金の払い込み・登記申請書類の作成・会社設立登記といった手続きが必要です。このとき、定款認証の費用や登録免許税などの費用が20~25万円ほどかかります。口座開設や税務署への届け出などが完了すると、アントレプレナーとして活動をスタートできます。
個人事業主として起業する場合は、事業開始後1ヶ月以内に「開業届」を税務署に提出します。費用は特にかかりません。
スタートアップに入る
アントレプレナーが立ち上げたスタートアップへの就職も方法のひとつです。アントレプレナーとしてのビジネスを間近で学ぶことができます。少し時間はかかりますが、ノウハウを吸収できるので自分がアントレプレナーになったときに役立ちます。実際のビジネス環境で経験をつめるだけでなく、人脈構築できる場合もあります。
大学で学ぶ / MBAを取得する
アントレプレナーは経営に関する知識やスキルを持っていることが強みになります。時間がかかってもこういった強みを持った状態で起業したい場合は、大学でアントレプレナーについて学んだり、経営大学院や夜間大学でMBAを取得したりするとよいでしょう。
インキュベーションを利用する
インキュベーションとは、起業および事業の創出をサポートするサービス・活動のことです。起業時には資金や人材、設備や施設などあらゆるものが不足しているため、アントレプレナーとしてスタートする大きな障害となります。
インキュベーターと呼ばれる支援団体や組織はインキュベーションプログラムなどを通じて、起業家に必要なモノや情報を提供してくれます。ビジョンは固まったけれどリソースがない場合は、そういった支援団体やプログラムを利用して、アントレプレナーとして事業を開始することができます。
まとめ
ゼロからビジネスを創出するアントレプレナーは、資格を必要としない代わりに明確なビジネスビジョンとマインドが必要です。アントレプレナーになるためには、起業して何を達成したいのか、しっかりと自分に問いかけることが大切ですね。
アントレプレナーについてよくある質問
アントレプレナーシップとは?
日本語では「起業家精神」と訳されます。起業する人が元々持っている資質として誤解されることが多いですが、リスクに挑みながら新しいビジネスを創出する姿勢や行動が本来の定義です。
ソーシャルアントレプレナーとは?
アントレプレナーも社会の課題に対する志を持っていますが、より社会問題の解決に軸を置いているのがソーシャルアントレプレナーです。ソーシャルアントレプレナーは、利益よりも社会貢献に重点を置いている場合もあり、緊迫した社会問題以外にも、福祉活動支援など社会全般に関わる活動を行うこともあります。
アントレプレナーとイントレプレナーの違いは?
イントレプレナーは社内で新規事業を立ち上げる人のことを指すため、新規事業そのものを立ち上げるアントレプレナーとは違います。アントレプレナーは経営者であるのに対し、イントレプレナーは従業員であるという違いもあります。