ECサイト用にアパレルの写真を撮影するなら、もちろん正しい方法でやりたいはずです。写真の質によって、購入か何も買わずに直帰かの大きな違いが発生します。
服の撮影は、ジュエリーの撮影ほど厄介ではありません。あなたが扱うのは、小さく光っていて精密な物品ではないからです。とはいえ、しっかり準備をしたうえで、すべてのディテールまで撮る必要があります。
今回のガイドの中では、商品撮影の基本をステップごとにカバーしていきます。必要となる機材、商品アイテムの準備、そしてフォトスタジオ(それが家だとしても)の立ち上げまでを紹介します。
免責事項:この記事は、多少の撮影知識があって、初めての商品撮影スタジオを立ち上げようとしているECサイト事業者に向けて書かれたものです。
ステップ1 商品をどのように見せるかを決める
何かを始める前にまず、ECサイトでアイテムをどのように見せたいかを決めておく必要があります。
アパレル事業者が商品の撮影をする方法として、3つの一般的なやり方が考えられます。
見えないマネキンを使う
商品の撮影には、アイテムのリアルな形状がわかるようにマネキンを使うと、お客さまにとって大きな価値となります。
オンラインショッピングをする人は、自分が身につけたときの感じがイメージしやすいと、商品を購入しやすくなります。
マネキンを使用すれば,人の体の形に合わせてアイテムを見せることができ,撮影のたびにモデルを探す手間も省けます。撮影後に背景を除去することで、プロらしいイメージを作り出すことが可能です。
ポイント:ストラップレスの商品でないかぎり、腕なしのマネキンを使うのはやめましょう。ぶら下がっている袖部分をPhotoshopでリアルな形にするには多大な時間とスキルが必要になります。背景が除去されているかどうかは関係ありません。
ポイント:まっすぐ立っているマネキンを使うようにしましょう。実店舗用にデザインされたマネキンは、複数並べたときにすべて同じに見えないように様々なポーズをしています。
写真から背景を除去したあとで、マネキンが片手を腰にあてていたり、ヒップを突き出していたりすると、とても変に見えてしまいます!
モデルを雇う
予算がある場合は、モデルを雇います。
モデルはどんなポーズもできますし、あなたのアイテムを魅力的に見せる色々なアングルでの撮影も可能にしてくれます。そのため、ECサイトやソーシャルメディアで使う際の文脈や流れに配慮したショットを撮るのに最適です。インスタグラムやピンタレストで使う場合を考えてみてください!
ポイント:色々なポーズを試してみる必要がありますが、購入者が見たいと思うアイテムの部分を隠しすぎてしまわないように注意してください。
モデルはまた、あなたの商品に個性を与え、ブランディングに貢献します。たとえば、多くのオンラインショップでは、「ターゲット顧客層」を代表すると思われるモデルを選んでいます。ZaraとArnhemを比べてみると、モデル、服、雰囲気、どれも大きく違っているはずです。
Zara(左)とArnhem(右)はそれぞれのブランドをもっとも表現するような異なるモデルとスタイルのショットを商品画像として使用しています。
マイナス点としては、マネキンと比べて費用が多くかかりますし、双方に都合のいい時間を調整しなくてはならず、これはたいていの場合簡単ではありません。
Mr Porterの商品画像による、マネキン(左)とモデル(右)の写真例
フラットレイアウトでの撮影
フラットレイアウトはもっとも簡単でコスト効率のいい撮影方法です。
シャツの撮影に適しているほか、ソックスやメンズのパンツとも相性がいいのをわたしは何度か見てきました。
わたしは通常、クールなイメージをソーシャルメディアでシェアしたいときを除き、ECサイトでフラットレイアウトを使うのをお勧めしていません。商品画像に関しては、リアルな形状で見せるほうがお客さまのためには価値があるからです。
フラットレイアウトを上手に撮るには、大きな白い紙やシーツを敷く必要があります。
商品が最高の状態で見せられるように気をつかいましょう。アイロンを当て、カラーを入れ、ボタンもしっかり確認します。ボール紙を使うと、平らでなめらかなシェイプを商品に与えることができます。
お客さまは商品を試着できないという点を忘れずに。自分がその商品を着用したときのイメージがもてないと、購入をためらいがちになるものです。
わたしがフラットレイアウトについて言及するのは、"KNOLLING"がソーシャルメディアを席巻していて、SNSをトラフィック元として軽視するのはマズいから、というのが理由です。
"KNOLLING"について聞いたことがない人のために説明すると、アイテムをグリッド状に並べるやり方のことです。
ソーシャルメディアのユーザー、とりわけInstagramとPinterestを使っていて、ファッション/ライフスタイルに特化しているユーザーは、商品を特定のテーマに合わせながら同時に優れたビジュアルを得るためにこうしたアレンジを用いています。あなた独自のフラットレイアウトの構図を作り上げ、リグラム、リピン、いいね、が押し寄せるのを見守りましょう。
少なくとも1つは自分の商品を使い、それを補完するようなアクセサリーや家庭用品を選びましょう。すべてが自分の商品である必要はありません。ここで大切な考え方は、まずソーシャルメディアプラットフォームにトラフィックを集め、そこから間接的にECサイトにトラフィックをもっていく、ということです。
商品同士をどう関連付けるか、そのやり方を考えるのが重要です。写真は、一般的なテーマやシチュエーション、色彩になるようにし、見ている人をあまり圧倒しないようにしましょう。
ステップ2 撮影用機材を準備する
破産するほど高額な機材を揃える必要はありません。デジタルカメラの値段は下がってきていますし、スマートフォンのカメラの性能はどんどん良くなっています。
必要になる撮影機材のリストは次のとおりです。
カメラ
正しいカメラを選択することで、プロレベルの写真とアマチュア写真との差がうみだされます。ミラーレスは、伝統的な一眼レフカメラと比較すると、技術的な新しさ、スタジオ照明との接続のしやすさ、軽量さなどの理由から、服の撮影に最良のタイプのカメラといえます。しかし、必要でないなら、だまされて買うことはありません。スマートフォンでも十分に機能します。
照明機材
服の撮影に、照明は欠かせません。潜在顧客はアイテムの細部まで見たいと思うため、カメラに十分な光量を与える必要があります。手始めに、3点照明(キーライト、補助ライト、バックライトまたはヘアライト)を実行できるように3つのライトを含んだ照明キットを選択することをお勧めします。
撮影にスマートフォンを使用するなら、カメラのシャッターに光を同期させる必要がないので、連続スペクトルの照明キットに投資するのがベストです。このタイプの照明キットをミラーラスカメラと一緒に使うこともできますが、従来の照明設定とワイヤレストリガーを使用するほうが良い結果が得られるでしょう。
スタジオ背景キット
きれいなイメージを作るためには、照明と同様に、背景も重要な設備の1つとなります。スタンド付きの無地ホワイトの背景を探すことをお勧めします。約10×20フィートのキットであれば、どんな長さのドレスや衣類であってもマネキンの全身像を収めて撮影することができます。
スタジオ(ワイヤレス)フラッシュトリガー
ミラーレスカメラについて前述したときに、スタジオ照明トリガーが必要と説明しましたが、このサードパーティのアクセサリーは撮影時にカメラとスタジオ照明キットをつないで消灯や点灯を制御します。これらを購入するときは、使用する予定のカメラブランドと互換性のあるブランドの製品かどうか、確認してください。
三脚
三脚はスタジオ撮影に必須です。頑丈な三脚を選ぶことで、不要な手ブレを防げます。ほぼあなたの目の高さにまで伸ばすことができる三脚で、脚を立てるときに役に立つので水準器を装備している製品を探しましょう。
マネキンまたはモデル
マネキンは全体的なスタイルにメリットをもたらし、予算を低くおさえます。
前述したように、腕や脚のないマネキンは使わないようにしましょう。
モデルを使うと高価にもなりますが、プロが撮影にもたらしてくれるメリットは、往々にしてコストを上回ることがあります。
たとえば、プロのモデルは着ている服を引き立てるように体を動かしてくれます。マネキンの場合、同じ効果を得ようとするならピンで衣服を止める必要があるでしょう。
また、モデルは自然な動きを服に与えてくれるので、購入者が共感しやすくなります。さらに、屋内スタジオの環境より、屋外でモデルにポーズをとってもらうほうが、あなたのブランドに合っていることも考えられます。
ライフスタイル系アパレルの写真は人気が高まっているので、あなたが求める全体的なルックや感情表現に合わせて対応しましょう。
撮影用ツールボックス
商品撮影のために衣類の準備をするとき、撮影用の万能ツールボックスがあると便利です。たとえば、ピンを使って特定の折り目やラベルを固定しておくと、あとでPhotoshop編集時の時間を大幅に節約できます。また、しわがなくシームレスなフィット感を演出するために、モデルやマネキンの後ろの余分な素材を洗濯ばさみでまとめて固定するのは良い方法です。
そのほかの価値のあるアイテムとして、必要な場所に布地を貼るためのテープ、カメラ用の予備バッテリー、スタジオ照明用の予備バルブ、しわを直すためのスチームアイロンなどがあります。
ステップ3 商品を準備する
優れた撮影の鍵は、準備にあります。準備に費やす時間が、あとで画像編集をするときの手間を大幅に減らしてくれるのです。写真に撮りたい衣類を全品集めてから、撮影準備が整うように流れ作業を始めることをお勧めしたいと思います。
すべての衣類にアイロンやスチームをかけること(お気に入りの曲のプレイリストと共に)が最初にやるべきことです。しわがないことを確認するために、すべてを吊るす前にこれをおこないます。
次に、撮影ツールボックスを開き、予備のバッテリーを充電し、ピンを使える状態にしておきます。マネキンを使うなら、最初のアイテムをマネキンに着せましょう。
ステップ4 あなたの写真スタジオをセッティングする
あなたのフォトスタジオはプロ仕様のものかもしれませんし、店舗の裏の空きスペースを使っているだけなのかもしれません。ちゃんとしたカメラと照明さえあれば、どちらでも構わないのです。
まずは背景をセッティングしましょう。それが済んだら、照明とカメラを準備します。前述したように、3点照明をセットするのがアパレル撮影にはベストのやり方です。
PhotographyPLA.NETによる3点照明のセッティング
最初に、カメラの横に照明をセットし、マネキンに向けます。これがキーライトとなります。
2番目のライトは補助光源となり、マネキンから45度の角度に置き、キーライトからはさらに離して設置します。
最後に、残りのライトをマネキンと背景の間に置きます。
上記の図は、モデルやマネキンの位置に対してカメラと三脚と照明をどこに置いたら良いかをわかりやすく示しています。
ステップ5 カメラの設定を確認する
カメラを設定する際には、考慮すべき3つの要素があります。絞り、シャッタースピード、ISO感度です。
絞り
衣類の撮影の場合、f/8〜f/11の高いF値での撮影が理想的です。これにより、あなたのアパレル商品にもっと焦点を当てたショットを撮ることができます。
シャッタースピード
シャッタースピードとは、シャッターが開いている時間のことです。理想としては、衣類撮影時は1/125前後に設定するのがいいでしょう。
ISO感度
服の撮影に最適なISO設定は、400〜800の間です。この設定は、使用する光源の種類によって異なります。人工光源を用いる場合は、ノイズを低減するためにISOを600〜800に設定します。
ステップ6 商品撮影をスタート
それでは、一番楽しみな部分、商品撮影にうつりましょう!
まずカメラを安定させます。三脚を使いましょう。こうすることで、より鮮明でシャープな商品画像が撮れます。三脚がない場合は、安定した場所か硬い場所にカメラを置きましょう。
マネキンまたはモデルは、カメラの中央に配置する必要があります。画面のほとんどをそれが占めるようにしてください。もっと「寄り」のショットが撮りたいときは、三脚を動かすかカメラの光学ズームを使います。
ポイント1:デジタルズームは使わないように。画像がトリミングされて、画質を損ねます。
ポイント2:カメラを2秒タイマーモードに設定する。こうすると、シャッターボタンを押したあとに、カメラが被写体に再度ピントを合わせることができます。
StyleRunnerは商品写真にモデルを使ってアイテムの着用例やスタイリングを見せています。
ディテールを見せる
服の撮影時には、細かい部分を見落とさないように注意してください。
事前にはやわらかい素材だと思っていたのに、商品が届いたら実際はかたい素材だった、という体験ほど消費者にとって嫌なことはありません。ジッパーだと思っていたら、実はボタンだった、というのも同様です。
ステッチ、布地、タグ、ジッパー、ボタンなど、アイテムに関して顧客が購入前に確認しておきたいと思うであろう箇所はすべて、写真に収めるようにしてください。
ディテールを見せておくことによって、カスタマーサービスへの問い合わせを減らし、コンバージョン率を上げることにつながります。顧客は、事前に必要な情報を得ることができているからです。
ユーザーが写真を拡大して見られるように、ズーム機能を有効にしておきましょう。いくつかのクローズアップショットを用意して、顧客に見るべき箇所を示すことも必要です。
Mr Porterによるディテールを含んだ商品写真の例
服を撮影するときのポイント
アイテムをお行儀よくさせておくために、撮影時に小物や小道具を使うことをお勧めします。
- 服のしわをとるためにアイロンをかけましょう。スチーマーが一番良いと思います。
- 衣類のバストを埋める必要がある場合は、パッド入りのブラをマネキンに着用しましょう。
- アイテムがマネキンやモデルには大きすぎるときは、ピンや洗濯バサミなどで調整します。
- 商品に動きを出したいときには、ファンを使用すると効果的です。
- 透明なテープを使って、タグやラベルが邪魔にならないようにします。
ステップ7 売上を伸ばすための画像加工
商品の撮影がおわったら、画像を編集して、オンラインショップで一貫した見栄えになるようにします。
ポストプロダクションのプロセスでは、写真をECサイトでどのように見せたいかを考慮する必要があります。一貫性をもたせるために、配置、白い背景、トリミング、色補正などをきっちり扱うことが大切です。
あなたの商品写真のレベルを上げたいなら、ゴーストマネキンの作成を検討してください。これ以上にプロフェッショナルな効果が得られることはありません。
ゴーストマネキンエフェクトは、モデルを見せることなく、商品イメージを立体的な人の形状に見えるようにします。衣類の内側の細かい部分を見せることで、商品をより3D的にディスプレイできるのです。
Matches Fashionによるゴーストマネキンイメージの例
ゴーストイメージのためにモデルを雇う必要はありません。マネキンのほうがうまく仕事をしてくれます。このゴーストマネキンのプロセスは簡単とはいえませんが、わたしを信じてください、これをやる価値はぜったいにあります。
ゴーストマネキンエフェクトの作り方
まず正面から製品の写真を撮ります。次に背後からも撮りますが、製品は裏返しにします。
右側の写真では製品が裏返しになっています。これは、アイテムのネックラインを作成するために使われます。
ここでは三脚を使うべきです。そしてズームを変えないよう注意してください。両方の写真で位置を固定できるように、マネキンの場所を床にマークしておくのも良いアイディアです。こうすることで、あとでアイテムを組み合わせるのが楽になります。
次のステップは背景の切り抜きです。前面から後ろ側を見通すことができるようにするためです。そしてPhotoshopで、後ろ側の写真の上に前側の写真を重ねますが、両方の写真が同じ距離と同じ角度から撮影されていれば、それほどむずかしくはありません。
Photoshopを使ったゴーストマネキンイメージの作成方法をステップごとに解説した記事もありますので読んでみてください。スクリーンショットを見ながら、実際にどう作業が進められるのかを詳細に確認できます。
The Outnetは商品の形状を見せるためにゴーストマネキンのイメージを使っています。
以上のことをやるには、ある程度のスキルと多少の時間が要求されますよね。よくわかります。もし手助けが必要でしたら、Pixcがあなたの代わりに背景を切り抜いてゴーストイメージを作成します。
最終ステップ 商品画像をアップロードして販売開始
最後にやるべきことは、販売先のオンラインショップやマーケットプレイスに、アイテムをアップロードすることです。その際に画像の要件を満たしていることを確認しましょう。
忘れないでください、服の撮影は楽しいものです。そして正しいやり方で撮影をおこなえば、あなたのショップはとてもいい感じに見えるようになります! もし自分なりのテクニックがあるなら、ぜひコメント欄で教えてくださいね。