Shopifyを利用するマーチャントの数は増え続け、インストールされるアプリの数も増えています。しかし、マーチャントはアプリが価格に見合ったものなのか、どのように知ればいいのでしょうか? アプリの料金モデルにマーチャントは何を期待しているのでしょう?
価格は、どのアプリをインストールするか決める際のもっとも重要なファクターの1つです。これは支払い額の話だけではありません。請求頻度や、請求の発生するタイミングも重要なのです。
以下は、わたしたちがマーチャントから得たフィードバックの一例です。
・「Shopifyから請求がくるのでない限り、アプリに支払いをしたいと思いません。アプリ開発者にクレジットカードの情報を渡して大丈夫という保証がないので。」
・「実際に役に立つアプリにしかお金を払いたくありません。売上がそれほど多くない場合、月額料金より手数料課金のほうがいいですね。」
・「価格設定があいまいではっきりしていません。アプリの月額料金がしょっちゅう変わっています。」
こうした混乱やフラストレーションを回避することが、アプリの成功の鍵になります。今回の記事では、マーチャントにとって合理的であり、あなたの収益に貢献するような料金モデルを構築するためのアドバイスとコツをご紹介します。
マーチャントの使用状況に課金を合わせる
アプリの課金額を決める前に、あなたが提供するサービスにとって合理的な課金モデルを決定する必要があります。Shopify用に作られたアプリの場合、課金はBilling APIによって設定され、処理されます。現在このAPIには、下記でご紹介するような一般的な5種類の課金モデルに基づいた関連リソースがあります。5種類の課金モデルは次のとおりです。
課金モデル
1ワンタイム課金
2 30日サブスクリプション
3年間サブスクリプション
4従量課金
5アプリクレジット
1.ワンタイム課金
ワンタイム課金は、マーチャントがアプリに対して一度だけ請求される場合に使われます。このリソースは、継続コストが発生せず、時間が経っても機能が大きく変更されないアプリに最適です。
ビジネスモデル例
「注文フォローアップ」という架空のアプリを例にとってみましょう。このアプリは商品を購入したお客さまに注文確認メールを送信します。
ここではメールのテンプレートを販売しているので、コスト分析をした結果、テンプレート1点あたり25ドルを請求することにしました。各テンプレートごとにマーチャントに請求するために、マーチャントがアプリ内で「購入する」ボタンを押したら即座に課金されるようにShopifyに25ドルのワンタイム課金をポストします。
Shopifyが請求とマーチャントの支払いを処理し、マーチャントが請求に対する支払いを終えたら、わたしは80%の収益シェアを受け取ることができます。
2.30.日サブスクリプション
RecurringApplicationCharge リソース(REST)やappSubscriptionCreateミューテーション(GraphQL)は、Shopifyアプリストアで広く使われていて、継続したサービスをマーチャントに提供するアプリに最適です。
このタイプのアプリを使うマーチャントは30.日ごとに課金されます。この課金サイクルは、Shopifyの課金サイクルから独立していますが、まとめて同時期に請求されます。これはマーチャントがShopify関連の支出を把握するのに役立ちます。
このリソースはBillingAPIのほとんどの機能を備えています。マーチャントへの課金前に自由にトライアルの期間を設定でき、使用上限を設定することも可能です(この点は後述します)。
ビジネスモデル例
この料金モデルを採用するアプリは、たいてい3つの料金プランを用意しています。前述したメールテンプレートの例を引き続き使っていきましょう。ただし、ビジネスモデルをピボットして、テンプレートは無料にすることにしました。その代わり、マーチャントのために送信するメールの数によって料金が決まります。
このアプリでは3つの明確な価格プランを用意しています。マーチャントが何に支払いをするのかわかるように、それぞれのプランでどのような機能が使えるのかを明確に示す必要があります。以下のような感じです。
・プラン1:「無料」とされていることが多いプランで、見込み顧客のためのアプリのお試し版になります。
・プラン2:小規模~中規模のビジネスを対象とし、毎月数百件の注文を想定しています(Shopifyマーチャントの大多数が当てはまります)。
・プラン3:1日に数千件の注文がある大規模なShopifyマーチャント(上級またはShopify Plusのマーチャント)向けです。
今回の例では、「無料トライアル」は必要ありません。すでに無料版を提供しているからです。
アプリ内では請求ページを作って、マーチャントがプランを選択し、適切なconfirmation_urlに飛んで課金を承認できるようにします。
また独自の管理画面を開発し、請求情報などの顧客情報をデータベースから取得します。マーチャントの現在のプランを見ることができ、次の請求日や、アップグレード/ダウングレードの履歴、インストール/アンインストールの履歴も確認できます。これはビジネスにとって重要なだけではなく、サポートチームにとっても価値のある情報です。
3.年間サブスクリプション
GraphQL BillingAPIで利用可能なappSubscriptionCreateのミューテーションによって、interval: ANNUALに設定した請求を立てることができます。これによりShopifyは一年に一度だけマーチャントに課金をおこないます。
30.日ごとの課金モデルは、たしかにマーチャントにさまざまな柔軟性をもたらします。たとえば、使用状況や季節性、成長の度合いなどのファクターに基づいてアップグレードやダウングレードをおこなうことができます。とはいえ年間サブスクリプションは、年間を通じて使用することが有益だったり必要だったりするアプリにとって、より良いオプションといえます。マーチャントからすれば、一年中同じサービスが受けられ、年に一度のペースでしか課金されないのでサブスクリプションがしやすくなります。
年間サブスクリプションが自分のアプリに合うかを判断する際には、アプリが提供しているサービスが年間を通じて変わらないものかどうかを認識する必要があります。さらに、既存の月額プランの一年契約バージョンを作る際は、年払いによる割引を提供するのが業界として一般的です。
年間サブスクリプションは、長期的にあなたのアプリを使用する気のあるマーチャントとの関係性を築くうえで最適な方法です。また、前払いで年額分を支払ってもらえるためキャッシュフローを早期に得られる利点があります。
ビジネスモデル例
前述のメールアプリのユーザーは、ライフスタイルブランドを運営していて、季節的なセールではなく隔週のメールを年間を通じて送信していることがわかりました。彼らのアプリ使用状況は、一貫していて予見性があります。そのため、年間プランを提供することは彼らにとって有益であるだけでなく、先行収益と使用状況予測をあなたのアプリビジネスにもたらします。
こちらも参考にしてください:GraphQLのShopify BillingAPI:アプリ開発者が知っておくべきこと
4.従量課金
従量課金は、30.日サブスクリプションに任意の追加費用で付け加えることができます。上限付きのサブスクリプションを作成したら、アプリ開発者はマーチャントの個別の課金承認を得ることなく、従量課金を上限額までポストできます。この従量課金分の請求は、いつでもサブスクリプションの期日に組み込めます。柔軟性の高さゆえ、Shopifyのアプリ開発者による従量課金モデルの採用は増加傾向にあります。
従量課金を採用する場合、いつ、どんな理由で課金がされるのかマーチャントに明確にしておくことが大切です。マーチャントが課金総額を把握しやすいように、グラフやレポートツールなど、使用状況が視覚的にわかる機能の追加を検討してください。
ビジネスモデル例
メールアプリの事例を続けます。追加機能を探しているマーチャントがいることがわかりました。しかし、この機能のために全ユーザーに対してアプリのアップデートを実行したくはありません。関連する追加のサポート負担が発生しますし、すべてのユーザーが追加機能を望んでいるわけではないからです。
代わりに、マーチャントのリクエストに基づく追加機能に応じて、追加料金を設定することが可能です。たとえば、月額5ドルの追加で以下のような機能を提供します。
・注文フォローアップメールに割引を追加/作成できる機能
・メールの送信数と発生収益を表示するレポートダッシュボード
・会計ソフトに売上を同期させる機能
マーチャントがこのような機能を選択したら、ベースとなる30.日の定期課金IDに5ドルの追加使用課金をポストします。マーチャントにとって追加機能が不要になったら、使用課金のポストをやめます。
従量課金を作成するために、すべての新規および既存マーチャントに新しい課金に合意してもらう必要があります。関係者を楽にするために、次回マーチャントがアプリを開いたら、新しい課金を承認してもらうようリクエストします。マーチャントがアプリを開かないでいる場合、以前までの請求モデルを引き続きサポートします。
5.アプリクレジット
アプリクレジットは、マーチャントに将来のアプリ購入に使えるクレジット(払戻ではない)を提供します。これは、エラー請求の返済や、サブスクリプションの割引、一般的な謝意の表明などにも使用することができます。クレジットを提供するには、アプリがストアにインストールされていて、クレジット同額以上の保留中の支払いがあることが必要、という点に注意しましょう。
ビジネスモデル例
架空アプリにバグが見つかり、前月に約束されていたとおり機能しなかったとします。
この問題へのお詫びとマーチャントのアプリ使用体験の好印象化のために、アプリクレジットAPIを使ってマーチャントに月額使用料分のクレジットを提供できます。お客さまは課金額のクレジットを受け取り、わたしはその分の損失となります。
こちらも参考にしてください:支払いを受ける:Shopifyアプリ請求サイクルの概要
ベストな請求リソースでベストな結果を得る
Shopify BillingAPIを構成する5つのリソースにより、アプリ開発者は効率的かつ効果的にアプリの課金をマーチャントに対しておこなえます。ワンタイム課金、30.日サブスクリプション、年間サブスクリプション、従量課金、アプリクレジットは、Shopifyアプリ開発者の多様なビジネスモデルをカバーします。
アプリの料金モデルを決めるときは、ユーザーのために心配無用でシンプルな請求になるよう、これらのリソースを計画的に使用してください。マーチャントのアプリ体験は、彼らをあなたのアプリに引き寄せて支払いを促進するために重要となります。
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