パンデミックの影響で企業の閉鎖が相次ぐ中、ポップアップストアを開設することは無謀に思えるかもしれません。しかし、世界が回復するにつれ、消費者はリアルな体験に飢えるようになります。オンラインショッピングの便利さには慣れていても、物理的なつながりをブランドと(そして人と)持ちたいと思っているのです。
さらに、コロナ渦で店舗スペースが余っており、商業施設の賃料が広く低下しているため、ビジネスにフィジカルな存在感を加えたい小売業者やブランドにとって、機は熟しています。Appear Here社の調査によると、アメリカ、イギリス、フランスでは、2020年の6月から8月にかけて、レンタル可能な小売スペースが125%増加しています。また、家主は空きスペースを埋めようと必死になっているため、価格を下げたり、賃貸条件を緩和したりしています。
私たちは、低予算で短期的に、そして素早く設置できるポップアップが、今後数ヶ月で急増すると考えています。この記事では、出店にかかるコストや売り込むためのマーケティング戦略、パンデミック後に話題となったポップアップの事例などを紹介します。
目次
ポップアップストアとは?
ポップアップストアとは、期間限定で開設される「臨時の店舗」のことです。
ビジネスの拡大のために小売店を始めてみたいと思っていても、常設の店舗を持つことによる経済的なリスクやコミットメントのせいで躊躇しているのであれば、ポップアップストアはあなたにとって最適なソリューションとなるでしょう。
デジタルネイティブな新興ブランドにとって、ポップアップは実店舗を試す理想的な機会となります。なぜなら、既存の顧客のニーズに応えるだけでなく、これまであなたのブランドと接点がなかった新しい顧客層にも存在をアピールすることができるからです。また、オンラインでの顧客獲得に多くの資金を投入することなく、ダイレクトに販売を促進することができます。
ポップアップは通常の店舗と同じように見えますが、多くのブランドがユニークで魅力的なショッピング体験を提供するために利用しています。
ポップアップストアの費用はいくらですか?
残念ながら、この質問に対する明確な答えはありません。場所、期間、サイズなどは、ポップアップのコストを決定する要素のほんの一部です。いくらでも費用をかけることができますが、逆に短期間のポップアップであれば、1,500ドル程度(約17万円)で実現することも可能です。
小売業の分析会社であるPopertee社は、30日間のポップアップの総コストを約29,000ユーロ(約33,000ドル、約360万円)と見積もっています。オンラインのオーガニックタトゥーブランドであるInkbox社が2016年にポップアップを行った際は、2週間の総コストに約15,000ドル(約165万円)、それに加えて他でも使用できる家具の購入に3,000ドル(33万円)の費用を投入しました。
注目すべきは、専門家が2021年はポップアップ実施のコストが大幅に下がると予測していることです。歴史的に低い商業施設の家賃価格は、コストの大部分を占める賃料が2019年に比べて11%以上も低くなることを意味します。
ポップアップストアを出店するメリット
お客様との直接のつながりを作る
テクノロジーの発達により、モノを購入することは便利で経済的になったかもしれませんが、対面式のサービスやリアルなショッピング体験に代わるものはありません。実店舗ではお客様とウェットなコミュニケーションがとれるので、パンデミック後の人々が切実に求めているつながりを提供することができます。
実店舗ではお客様とウェットなコミュニケーションがとれるので、パンデミック後の人々が切実に求めているつながりを提供することができます。
ポップアップストアは、あなたのブランドが提供するオムニチャネル体験においても重要な役割を果たします。消費者は、ソーシャルメディアや検索エンジン、印刷物など、あらゆる場所で商品を目にします。すでに確立されたオンライン体験をオフライン体験で補完することは、ロイヤルティの高い熱心な買い物客のネットワークを構築する優れた方法です。
話題性と認知度の向上
希少性の原理を活用してお客様に行動を促すことは、効果の実証されたマーケティング手法です。期間限定のポップアップは、終了日を明確にして時間に希少性を持たせることで、買い逃しのないようにお客様を誘導することができます。
このアプローチは、新製品やコレクションのプロモーション、大規模なキャンペーンの開始、あるいは単純にブランド全体の認知度向上を目指す場合に特に有効です。
ポップアップの正確な開始日と終了日を正確に知らせることで、お客様に強い危機感を持ってもらいましょう。また、Facebookでイベントページを作成したり、メールリストで開催の事前告知を配信しましょう。在庫に限りがあり、特別感を演出したい場合は、すべての商品が完売した時点を終了日とすることを検討してください。
顧客獲得コストのバランス
このパンデミックにより、小売業者がマーケティング活動をオンラインに振り向けることを余儀なくされた結果、検索連動型広告やソーシャルメディアによる顧客獲得コストが上昇しています。こうしたオンラインでの活動や取引が盛んになるにつれ、デジタルコストとレンタル(賃貸)コストのギャップは小さくなってきました。
オンラインでの活動が盛んになるにつれ、デジタルコストとレンタルコストのギャップは小さくなってきました。
CBREによると、消費者向け不動産の空室率の上昇により、ニューヨークのソーホーなどでは、商業施設の賃料が2019年に比べて37.5%も低い、過去最低水準にまで落ち込んでいます。空室に対処するために、家主は賃貸条件を緩和し、店舗を活性化させるためにポップアップのテナントを熱心に探していると言われています。
これは、ブランドにとって、低リスク・低コストの環境で小売業を試し、ウェブトラフィックにフットトラフィック(実店舗への来店)を加えてマーケティングを多様化する、かつてない機会であることを意味します。
近い将来、物理的な印象(インプレッション)は、デジタルな印象よりも手頃で質の高いものになるでしょう。
ブランドと商業スペースをマッチングするプラットフォームを提供するNeyborlyの創業者Ben Seidl氏は、「近い将来、物理的な印象(インプレッション)はデジタルな印象よりも手頃で質の高いものになるでしょう」と語っています。
常設店舗の市場をテストする
ポップアップストアは先行投資が少なく済むので、テストの場としては最適です。ポップアップの成功は、あなたのビジネスが実店舗への進出に適していることを示す良い指標となります。ポップアップで思ったほどの成功を収められなかった場合は、事業拡大のための新たな方法を模索する必要があるかもしれません。
(効果測定の指標は本記事の後半でいくつか紹介します。)
メガネブランドのWarby Parkerは、デジタルネイティブのブランドだったので、最初にポップアップによる実店舗のテストを行いました。この実験は非常に成功し、同社はいくつかの店舗をオープンし、現在では約90の小売店を展開しています。
繁忙期に売上を伸ばす
ブラックフライデーやサイバーマンデーなどの繁忙期は、ポップアップを開くのに最適な時期です。ポップアップは、お店が閉店してホリデーシーズンが終わった後も定着率を高めることができ、季節的な買い物客を生涯の顧客にすることができます。定期的にポップアップを開催すれば、常連客に期待感を持ってもらうことができます。デンバーのクリストキンドル・マーケットは、地元の人々や観光客が毎年楽しみにしているポップアップの一例です。
新しい市場をテストし、既存の市場で支持を得る
新規事業にとって、自社製品の需要を検証することはとても大切なことですが、本当の意味での製品の需要は、お金が動いて初めて実証されます。
少量のバッチで商品を製造してポップアップでテストすることは,商品を大量のロット製造する前に顧客の需要を確認するための一つの方法です。例えば、新しいコレクションや製品ラインのアイデアがある場合、まずは1〜2点の商品を作って人気があるかどうかを確認します。
また、ポップアップでは、様々な価格帯や商品の組み合わせ、新商品のアイデアを試すこともできます。
実際に販売してお客様の反応を確認することで、その商品に今後もお金をかけてもよいか、またどのくらいお金をかけるべきかを知ることができます。こうしてお客様からのフィードバックをダイレクトに受け取ることができるメリットがポップアップにはあります。
すでにオンラインでビジネスを確立していて、特定の地域に強力な顧客基盤を持っている場合は、ポップアップストアを利用することで、文字通り最高の顧客がいる場所に行くことができます。また、ターゲット層が住んでいる地域での口コミマーケティングにも役立ちます。
古い在庫の処分
古い在庫(デッドストック)を抱えたままにしておくことは、思った以上にコストがかかります。売上を逃しているだけでなく、維持費を支払い、ビジネスの他の部分に資金を投資できる機会を阻止していることになります。さらに、在庫はいずれ古くなって売れなくなる可能性があるので、収益と資本の損失を意味します。
ポップアップストアは、フレッシュなディスプレイや魅力的なビジュアルマーチャンダイジング要素を用いて、古くなった在庫(特に賞味期限の短い季節商品)に新たな息吹を吹き込み、新しい買い物客を呼び込むのに最適な方法です。衝動買いを誘うためには、1個買うと1個無料になるようなプロモーションを展開したり、他の商品とセットにしたりすることが有効です。
ポップアップストアに最適な場所とは
ポップアップに最適な場所を確保することは、ストアの成功を左右する重要な要素です。考慮すべきポイントはいくつかありますが、その中で最も重要なのは、どのようなタイプのスペースがあなたのイベントに適しているかを判断することです。ポップアップによく使われるスペースはいくつかあります。
- 空き店舗:空き店舗は店舗スペースとして使用されるのを待っている状態です。あとあなたのブランドコンセプトに合わせてカスタマイズするだけです。理想的なエリアで空いている店舗を探し回るか、地元の不動産業者に相談してみましょう。
- ショッピングセンターやモール:多くのショッピングモールでは、ブースや空き店舗などをレンタルすることができます。ショッピングモールのスペースは他の場所に比べて費用対効果が低いかもしれませんが、お金を使いたいと思っている消費者に幅広くアピールすることができます。
- ポップイン:ポップインとは「店舗の中にある店舗」のことで、既存の実店舗ブランドの成功に便乗するのに最適な方法です。例えば、「Pop-in@Nordstrom」では、旅行用品ブランド「Away」とのコラボレーションによるポップインショップを展開しています。また、ホテルもポップインには最適な場所です。
- ギャラリー/イベントスペース:ギャラリーやイベントスペースは、典型的な実店舗とは異なり、自由度の高さが魅力的です。イベンド用に準備されているので、デジタルブランドのコンセプトを思いのまま空間デザインに変換することができます。
- 移動式:1つの場所に限定したくない場合は、トラックやバスをレンタルして移動型のポップアップショップを開催することを検討してください。2017年にCasper社はNap Tour(お昼寝ツアー)と称してバンクーバーからトロントまで巡回し,カナダ中のお客様に同社のマットレスを試す機会を提供しました。ファーマーズマーケットや公園など、お客さんがよく来ると思われる公共の場に設置すれば、さまざまな場所で活動することができ、リーチを最大化することができます。
ポップアップの場所の選び方
どのようなポップアップを行うかが決定したら、次は場所を選びましょう。あなたのショップの目的も考慮すべき重要な要素のひとつです。新しい水着コレクションを発表するのであれば、トロピカルな場所やビーチの近くがよいでしょう。実店舗に移行するかどうかを検討している場合は、現在の販売データをもとに、既存のお客様がどこにいるのかを把握します。
大まかなエリアが決まったら,その他の要素にも目を向けてみましょう。
近隣の小売店やイベントなども重要な要素です。周辺の小売店が、あなたが提供している商品と補完関係にあるか、競合関係にあるかを確認してください。補完的であればよいですが、直接の競合店があるエリアは避けた方が良いでしょう。既存の店舗が競合店に脅威を感じると、潜在的な味方を作ることができなくなります。自己紹介を兼ねて、その地域の他のショップオーナーと親交を深めましょう。そうすれば共通のターゲット層の特徴など、貴重な情報を得ることができます。
最後に、最も重要なことの一つは、人通りの多さです。あなたが検討している地域や通りは、人通りの多い場所ですか?そして何よりも大切なのは、その人たちがあなたがターゲットとしている客層かどうかです。
ただし、ブランドによっては、繁華街の賑やかな場所への出店は最優先事項でないかもしれません。パンデミックの後、ブランドが地元や郊外に進出するケースが増えています。例えば、ロンドンでは、ウェストボーングローブ、ニールストリート、カーテンロード、コロンビアロード、ゴルボーンロードが、パリでは、テュレンヌ通り、ピエール・レスコット通り、ロワ・ドゥ・シシレ通り、シャロンヌ通り、ドゥベルレイム通りが、それぞれトップ5にランクインしています(Appear Here社調べ)。
パンデミックの後、ブランドが地元や郊外に進出することが多くなりました。
一方で、都市に留まり、より慎重な消費者の考え方に寄り添う決断をしたブランドもあります。最終的にはあなたの顧客が誰で、どこにいて、どのようにつながりを持ちたいと思っているかが重要です。
ヒント:顧客メールのデータを分析して、顧客がどこにいるのか、特定の都市や地域に集まっているのかを調べてみましょう。
ポップアップストアの会場を選ぶ際の注意点
ここでは、会場の候補を絞るための要素をいくつかご紹介します。
ポップアップストアの種類
まず最初に、計画しているイベントの種類と、それぞれのアピールポイントを理解する必要があります。ポップアップにはいくつかの種類があります。
- プレスプレビュー:著名なジャーナリストやブロガーなどを集めた招待者限定のイベントでショップを独占的に見てもらい、ショップの情報を広めてもらいます。
- ローンチパーティー:初めてのポップアップ開催や新商品の発表などは、お披露目パーティーと銘打ったイベントに最適です。DJを雇ったり、食べ物や飲み物を提供して華やかさを演出し、SNSでのシェアを促進したりすることで、より多くの人にブランドをアピールすることができます。
- 体験型:他では得られないようなユニークな体験を来場者に提供することで、あなたのブランドのファンを増やしましょう。ワークショップの開催やゲストスピーカー招待など、あなたのブランドに最適なフォーマットが何かを考えてみましょう。例えば、サブカル系ファッションを販売するHutchLAでは、ブランドのデザインと世界観が合致したタトゥーアーティストを起用したポップアップを開催したことがあります。
- インフルエンサー・パーティー:同じジャンルで活躍するインフルエンサーにイベントの「スター」となってもらい、彼らのコミュニティにリーチしましょう。この機会をあなたとインフルエンサーの双方にとって大きな利益をもたらすコラボレーションと捉え、彼らにはSNSへの投稿で事前に期待感を高めてもらいましょう。インフルエンサーにファンとの交流というユニークな機会を提供することで、彼らのファンベースをあなたの顧客ベースに取り込みましょう。
- スポンサーイベント:単発のメディア掲載でもメリットはありますが、スポンサー付きのイベントに投資することで、さらに多くのメディアカバレッジを得ることができます。例えば、あなたと同ジャンルの地元雑誌とパートナーシップを組めば、ポップアップの開催前から開催後までを取材してもらえるでしょう。
ポップアップストアの外観
- 間口:店先にはウォークインやフットトラフィックのための歩道がありますか?また店頭受け取りを簡単に管理するために、間口は十分な広さがありますか?これからポップアップを開催するブランドにとって、間口の広さは重要な検討事項となります。
- 看板:検討している場所に看板が設置されているかどうか、設置されている場合はカスタマイズ可能かどうかを確認してください。スペースによっては、エントランスや店頭にすでに他ブランドの看板が設置されていることがあり、その場合はあなたのショップに気づいてもらえない可能性があります。また、看板の設置自体が許可されていないスペースもあります。何が可能かとともに、お客様があなたのポップアップをどのように見つけるかの導線も整理しましょう。
- 状態と清潔さ:家主は通常、ポップアップスペースの内部がきれいに保たれていることを保証しますが、外装は風雨の影響を受けやすいのであなたが責任を持ってきれいにしなければなりません。ほうきや窓ふきを用意したり、鉢植えを持参したりして、外装の清潔感も保てるようにしましょう。
- 駐車場と公共交通機関へのアクセス:アクセスしやすい環境であればあるほど、より多くのお客様に来店いただけます。敷地内に駐車場があるのは理想的ですが、現実的ではない場合もあるので、できる限りアクセスしやすい環境を整えましょう。具体的には、公共交通機関のルートを調べたり、パーキングメーターの料金や時間を確認したり、近くに有料駐車場がないか探してみましょう。
ポップアップストアの内観
- スペースの広さ:パンデミックが終息して店舗の営業が再開されたとしても、買い物客にとって健康と安全の確保は重要事項です。お客様が距離を保ちながら商品を見ることができるよう、十分な広さを確保しましょう。
- インターネットへのアクセス:通常、ほとんどのスペースにWiFiが含まれていますが、高速インターネットアクセスが利用できるかどうかを賃貸業者に確認してください。インターネット接続環境は、POSシステムをスムーズに動作させるために重要です。また、お客様が実店舗を探索しながらオンラインショップを閲覧できるようにするためにも必要です。その他にも、販売員にモバイルPOSを持たせることで、顧客のプロファイルをその場で確認し、店舗での体験をパーソナライズすることができます。
- 収納スペース:陳列されていない在庫が目に見えると、どんなに広いスペースでも雑然とした印象を与えてしまうので、収納スペースを確保しましょう。多くの会場には専用のストックルームがないので、カーテンやルームディバイダーを使って一時的な仕切りを作ることができないか検討してみてください。そうすれば、よりプロフェッショナルで整然としたスペースに見えるでしょう。
- 照明:適切な照明はムードを演出し、商品を際立たせます。店舗に適した照明は、作りたい雰囲気によって異なりますが、あなたのブランドがモダンなテイストであれば、明るい照明が効果的です。クラシックな美しさを持つブランドには、ソフトな照明がよく似合います。電球に調光機能がついているか、ランプや携帯用の照明が利用できるかどうかなどを確認してみましょう。
- 盗難防止機能:Tyco Retail Solutions社は、小売店の機会損失の34%が万引きや犯罪によるものだと推定しています。十分な損失防止対策が施されているスペースを探しましょう。監視カメラやアラームシステムは、どちらも万引きを防ぐ効果のあるツールです。カメラが設置されていない店舗では、あなたの前に会場を利用したポップアップストアがどのような対策をとっていたか質問してみましょう。
- ディスプレイスペース:会場ごとにディスプレイスペースは異なります。検討している場所に、商品や資料の展示に必要な設備が整っているか確認しましょう。
- スピーカーシステム:音楽はお店の雰囲気を作るのに重要です。スピーカーシステムが設置されていれば言うことはありませんが、装備されていない場合はBluetoothスピーカーを持参して、オープン前に必ずサウンドテストをしておきましょう。
ポップアップストアの会場の探し方
ポップアップに適した会場があるかは不動産業者に直接問い合わせることで確認できます。また、オンラインで会場を検索し、自分で物件を予約することも可能です。
海外では、ポップアップに特化したデータベースを提供するサイトが充実しているので、興味があれば私たちがお勧めする下記サイトを覗いてみてください。
- Neyborly
- We Are Pop Up
- Appear Here
- Bulletin
- Pop Up Shops
- Uppercase
- Poppir
- Storefront
- Peerspace
- Popertee(U.K.)
なお、日本では「SHOPCOUNTER」や「軒先ビジネス」などがオンラインでポップアップ向けの物件情報を掲載しています。
会場を確保する前に知っておくべき法務知識※
※以下は欧米における一般的な注意事項です。日本とは異なりますのでご注意ください。※
ポップアップを出店するにあたって、いくつかの法的文書を知っておく必要があります。
リース契約
リース契約は最も重要な書類です。リース契約の下では賃貸人はテナントとみなされ、両者が合意した期間においての独占的な所有権が与えられます。契約書には、スペースの変更や営業時間などを含め、許可されていることが規定として明記されています。
なお、店舗を検討する際には、月々の支払額の包括的な見積もりを要求してください。スペースによっては、追加費用が基本家賃と同額になり、毎月の支払額が2倍になることもあります。事前にこうした追加費用を把握できていなければ、一気に予算オーバーとなって資金繰りが苦しくなってしまう可能性があります。
ライセンス
出店する地域やポップアップの期間によっては、リースではなくライセンスが必要になる場合があります。ライセンスとは、家主の資産を使用するための法的権限をライセンシーであるあなたに与えるものです。場合によっては、ライセンスなしで物件を使用することは違法となるので、事前にきちんと確認しておきましょう。
一般的に、ライセンスは短期滞在者向けに提供されるもので、限定的な取り決めがなされており、独占的な使用が保証されていない場合もあります。
許認可や資格
各地域には、独自の法的規制と事業許可の要件があります。例えば、多くの都市では、食品やアルコールの販売に許可が必要です。したがって、オープニングでシャンパンを提供する予定の場合は、適切な許可を確保する必要があります。
オープン日に万全を期すために、不動産業者・家主・行政などに問い合わせ、法律で義務付けられていることをクリアしているかを確認してください。
保険
事業保険(または商業保険)は、個人向けの保険とは異なります。適切な保険に加入していないと、あなたのビジネスだけでなく、従業員やお客様をも危険にさらすことになります。
一部のレンタルサービスには保険が含まれていますが、リスクマネジメントの専門家や企業に相談してみることをお勧めします。
スペースを予約する前に確認すべきこと
スペースを予約する際には以下のような質問を通して、物件管理者と契約条件などをきちんと整合しておきましょう。
- レンタル料はいくらですか?(ポップアップの実施期間に応じて)1日・1週間・1ヶ月の料金を確認しましょう。なお、場所を決める前には必ず複数のスペースを回ってエリアの相場を把握し、必要であれば恐れずに価格交渉を行いましょう。
- レンタル料には何が含まれていますか?レンタル料金に含まれているものを細かく確認しましょう。広さ、設備、入居日などを含めたすべての情報を書面で入手するようにしましょう。
- 水道・光熱費などの費用は追加で発生しますか?光熱費などの追加費用がある場合は、それがどのように分割されるかを明確にしておきましょう。どの費用を負担するのか、それが妥当なものかを事前に精査しておくことが大切です。特にポップアップの光熱費は、予想外の大きな出費になる可能性があるので注意が必要です。
- スペースのレイアウトはどうなっていますか?現在の店舗のレイアウトを把握しておくと、あなたのポップアップの完成形がイメージしやすくなります。縮尺図を用いてデザイン案をスケッチしてみることで、あなたのニーズに合ったスペースとなっているか確認できます。
- 天井、窓、ドア、カウンター、柱などの具体的な寸法はどうなっていますか?細部まで正確に寸法を確認しておきましょう。これらはディスプレイや看板を設置する際に必要となる情報で、どのくらいあなたにデザインの自由度があるかを知るためにも事前に把握しておくべきポイントです。
- スペースのレイアウト変更は可能ですか?あなたがどのくらいスペースをコントロールできるかを確認しておきましょう。ギャラリーを複数のショップと共有している場合などは、壁に穴を開けたり、大幅な変更を加えることはできないかもしれません。家主にこれらの注意事項を確認し、それらがあなたのポップアップのデザインに影響を与えるかどうかを判断しましょう。
- 誰が何に対して責任を負っていますか?物件オーナーは通常、自身の責任の範囲を限定しようとするので、リース契約は細部の文言まで読み込んでください。火事や配管トラブルなど、何か問題が起こったときに誰が責任を負うのかを事前に理解しておくことは、後でクレームをつけられることを防ぐためにも有効です。
- インターネットやWiFiはありますか?Shopify POSやモバイルカードリーダーなどでトランザクションを処理し、クレジットカードでの支払いを可能とするためにはインターネット接続が必要です。そのためにも、契約にインターネット接続も含まれているのか、それとも自分で設定する必要があるのかを確認しましょう。
- 保険は必要ですか?リース契約を結ぶ際には、不動産保険に加入することが前提条件となることが多いです。このような保険は、盗難、会場やガラスの修理、商品の破損など、様々なトラブルからお客様を守ります。
- 会場を確保するための保証金はどのくらい必要ですか?ポップアップの開催期間が複数月に渡る場合は、家賃1ヶ月分の保証金が必要となることが多いです。短期間の場合は、家賃の3分の1相当を預けることが期待されるでしょう。ポップアップ終了後、保証金がいつ、どのように返却されるのかを確認しておきましょう。
- どのようなフットトラフィック(来店数)が期待できますか?人通りについては独自の調査を行うことをお勧めしますが、物件オーナーがこうした情報を把握・共有してくれる場合もあります。展示会にブースを出店する場合などは、忘れずに問い合わせましょう。
パンデミック後のポップアップストアのありかた
パンデミックは消費者の行動に大きな影響を与えました。安全で利便性が高く、収益性の高いポップアップを実現するためには、いくつかの重要なサービスの提供を検討する必要があります。
小売店においては、お客様の来店をあてにせず、店舗を「ダークストア」として活用するケースが増えています。近いことが売りであるポップアップでは、店頭受け取りやデリバリーのオプションを提供することも検討すべきです。
以下のようなサービスを検討してみてください。
- 店頭受け取り:“クリック&コレクト”や「BOPIS(Buy Online Pickup in Store)」とも呼ばれる店頭受け取り形式は、安全で便利な買い物の方法です。お客様はオンラインで注文し、ポップアップを商品の受け取り店舗をして活用します。
- 非接触型決済:2020年に健康への懸念が高まるにつれ、多くの消費者がより安全な決済オプションを求めるようになりました。ShopifyのFuture of Retail Report 2021によると、商品購入者の62%が、店頭でのデジタルまたは非接触型の支払いに抵抗を感じなくなりました。
- QRコード:QRコードを使用すると、小売店でのチェックアウトが完全になくなります。QRコードの活用でモバイルショッピングがさらに簡単になるので、お客様はスマートフォンを使ってコードをスキャンし、オンラインで商品の購入を完了することができます。Shopifyのマーチャントであれば、Shopcodes(ShopifyのQRコードアプリ)を使って、お店の中でQRコードを生成することができます。
- アポイントメント・ショッピング:より安全な買い物をするためのもう一つの方法は、一度に店内にいる人の数を減らすことです。その1つの方法がアポイントメント・ショッピングで、お客様の来店を時間帯ごとの予約制にすることで、店内の人数を制限するものです。Shopifyのデータによると、50%の買い物客がこの方法に興味があると回答しており、特にイタリア、スペイン、フランス、イギリスの買い物客に人気があります。
ポップアップストアのマーケティング方法
プロモーション戦略を考える際には、消費者がポップアップに「夢中になれて、つながりを感じられるユニークな体験」を求めていることを忘れてはなりません。Retail Touchpointsによると、多くの消費者は、個性的なサービスや商品、地域に密着した品揃え、および最適な価格設定を求めています。もし、あなたのポップアップがそのようなものを提供しているのであれば、積極的にアピールしていきましょう。
従来メディアをターゲットするだけでなく、インフルエンサー・マーケティングの活用、地元ブロガーへの売り込むなど、イベントのPRを行う方法はさまざまです。
メディアやインフルエンサーをターゲットにする
コンタクトをとるメディアのリストを作成する際には、あなたのターゲット顧客層がイベントに関する情報をどこで入手しているか、どのような出版物やウェブサイトをよく読んでいるかを考えてみましょう。
ポップアップのプロモーションでは、オーディエンスの規模が必ずしも最も重要な要素ではありません。
マイクロインフルエンサーはフォロワー数が少ないかもしれませんが、彼らを完全に排除してしまうと、あなたがポップアップを出店する地域で影響力のある潜在的なパートナーを見逃すことになりかねません。他にもいくつかポイントがあるので、掘り下げて見てみましょう。
- あなたの業界を代表する主要なインフルエンサー、ブロガー、デジタルクリエイターのリストを作成し、彼らに連絡を取り、参加してもらうためのさまざまなインセンティブを強調します。もし彼らがあなたのブランドをまだ知らないのであれば、ある程度の予算を確保して、ポップアップを始める前に無料で商品を提供したり、彼らがフォロワーと共有するための限定的な割引コードを提供したりします。
- あなたが売り込みたい相手のニーズは何かを理解しましょう。テンプレートを使うことは悪いことではありませんが、良い反応率を得るためには打ち出すメッセージをカスタマイズする必要があります。
- メディアが記事を書くための時間を確保できるよう、イベントについて十分な事前告知を行いましょう。地元の新聞は発売の2〜3ヶ月前、オンラインメディアは2週間前を目安にしてください。
- メディアへの売り込みは、短くシンプルに行いましょう。イベントに関するすべての重要な情報が目立つように、簡単に見つけられるようにしましょう。
- ポップアップショップを盛り上げていきましょう。もうすぐ人が集まるイベントやパーティーを行うことが再び安全になります。その時がきたら、地元の有力者を招いてローンチパーティを開くことを検討してみてください。例えば、アパレルブランドのKithがパリにポップアップショップをオープンした際には、素晴らしい盛り上がりを見せ、ターゲット層にリーチできる地元の有力なブログで大々的に取り上げてもらえました。
ソーシャルメディアでポップアップストアの話題を作る
ポップアップ開催前から開催後まで、ソーシャルメディアでの露出を最大限に高めるために準備をしましょう。
プレポップアップ(開催前)
- 最初の広報活動で築いた話題性を維持しましょう。プレス用資料やその他の資料にブランドのハッシュタグを入れておくと、オンライン上でイベントについて投稿されたコンテンツを見つけやすくなり、キュレーションしやすくなります。
- 共同マーケティングの機会を見つけましょう。近くのホテルやレストランに、自分たちのソーシャルメディアでイベントのことを紹介してもらい、そのお返しにあなたも無料で彼らの宣伝を行いましょう。旅行者は、休暇中に見つけたユニークな商品やストーリーを持って帰りたいものです。
- ブランドのソーシャル・チャンネルで、ポップアップ準備中の様子を投稿しましょう。ユーザーが期待する商品のプレビューを提供しましょう。オンラインコンテストを開催し、ポップアップで優勝者を発表するキャンペーンを展開することも有効な手段です。
- インフルエンサーやブロガー、クリエイターなどに商品を送り、投稿してもらう。より多くの製品に触れてもらうことで、その製品について投稿してもらえる可能性が高まります。(注:事前にスケジュールを組んで、発売の3~4週間前には連絡を取るようにしましょう。)
ポップアップ期間中
- ムードに合わせた音楽を。あなたのストアではどんなムードを作り出そうとしていますか?それに合ったプレイリストを用意しましょう。もしあなたがストリートウェアのファッションブランドであれば、オーケストラの音楽は適していないかもしれません。
- ユーザー作成のコンテンツを奨励します。お客様が写真やビデオを撮りたくなるような瞬間をストアの中に作らなければなりません。言い換えれば、インスタ映えする店舗にする必要があります。自撮り用の壁、商品のパーソナライゼーション、面白い看板などといった覚えておきたくなるものを用意することで、お客様にオンラインで写真を投稿してもらえる確率は上がります。また、コンテストなどのゲーム性を持たせることで、共有することへのインセンティブを与えることもできます。
- インフルエンサーにコンテンツ制作を依頼する。さらに一歩進んで、InstagramのインフルエンサーやTikTokのクリエイターに、ポップアップ期間中にコンテンツを作ってシェアしてもらうようにしましょう。そうすることで、ブランドを中心としたコミュニティを構築することができ、彼らのファンベース全体をポップアップやウェブサイトに誘導することができます。
BevとHighline WellnessがNeyborlyと協力してバレンタインデーをテーマにしたポップアップ「The Dating Shop」を立ち上げたとき、彼らはセルフラブを題材として扱う写真家兼TikTokクリエイターのDavid Suh氏をイベントに招待しました。このポップアップは、彼にとって、ファンとの交流を図れる貴重な場となりました。参加したブランドにとっては、お客様が商品に触れている様子を収めたフレッシュなコンテンツを制作してもらうまたとない機会となりました。
同じポップアップで、花屋のPetal Mistryは、フラワーアレンジメントの壁を設置し、カップルがその前で写真を撮ることができるようにしました。(これは、長らく続いたロックダウンから開放され、インスタ映えする写真に飢えていた人々のために生まれたコンセプトです。)
ポップアップ開催後
- ポップアップが終わっても、会話が途切れないようにしましょう。苦労して作った話題を維持し、ブランドやポップアップの体験について話している人々との交流を続けましょう。
- ウェブサイト、ソーシャルフィード、商品ページ、その他のオンラインチャネルで、ユーザー生成コンテンツを活用しましょう。Bazaarvoice社の調査によると、買い物客の3分の2以上が、展示されている写真やプロが撮影した写真ではなく、ブランドの実際の顧客の写真を好んでいることがわかりました。興味深い商品ページの写真は、コンバージョンを24%も向上させることができます。
- POSを利用してEメールアドレスを収集し、ターゲットを絞ったソーシャルメディア広告を実施することで、買い物客をオンラインストアに誘導することができます。ポップアップで得た教訓は、今後のデジタルキャンペーンに活かすことができます。
ポップアップストアの効果測定
ポップアップを企画する際に最初にすべきことは、イベントの目標を明確にし、具体的なKPI(重要業績評価指標)(KPIとは)を設定することです。そうすることで、あなたがポップアップで何を達成しようとしているのかを理解することができ、最終的に出店が成功したかどうかを判断することができます。
事後検証を行うことで、次回は何を変えればいいのか、対面販売があなたにとって効果的ななチャネルなのかどうかがわかります。
ポップアップの評価指標(売上、来場者数、ブランド認知度、Eメールの新規リードなど)を詳細に分析するようにしましょう。
販売指標の検証
ポップアップの目的は売上だけではありませんが、ビジネスである以上、好調な売上があなたの最終的な目標であることは変わりません。データを精査する際には、以下のような売上指標を検討しましょう。
- 日付別売上高:日付別の売上高は、次にポップアップを開催する最適なタイミングを判断するのに役立ちます。特に混雑していた日や時間帯を知ることは、特別なプロモーションや景品を計画したり、スタッフの増員が必要な時期を知るのに役立つ情報です。
- 顧客別の売上高:顧客別の売上高は、平均的な総アイテム数と総消費額の両方に分けられます。このデータを利用して、洗練された顧客プロファイルの作成・分析を行い、顧客をセグメント化することができます。また、価格感応度、購買習慣、商品の好みなどの洞察を得て、オンラインプロモーションやキャンペーンに役立てることもできます。
- 製品別売上高:SKU(Stock Keeping Unit)、バリエーション(カラー、サイズなど)、ベンダー別の売上高などにズームインすることで、商品そのものを評価することができます。この情報は、どの製品ラインに投資すべきか、どの製品ラインを削るべきかを教えてくれます。また、ベストセラーは、ビジュアルマーチャンダイジングやウィンドウディスプレイの参考にもなります。
- 従業員別の売上高:伝統的な歩合制の報酬体系を採用していない場合でも,どの従業員が最も多くの売上を上げているかを知ることで、将来の従業員の雇用やトレーニングに反映させることができます。
フットトラフィック(来店者数)の把握
以前は、来店者数を測定するのは難しく、正確なデータが得られないことがよくありました。今では、店舗に入ってくる人の数だけでなく、その人たちがどんな人で、どんな好みを持っているのかを簡単に知ることができるトラフィックカウンターがあります。
もし予算に余裕があれば、Dor、Aislelabs、ShopperTrak(※)などのトラフィックカウンターの使用を検討してみてください。これらのツールにより、分単位で正確な来店者数を分析することができます。
(※)欧州中心に展開中の企業です。日本では、locariseやflowなどが同様のソリューションを提供しています。
ポップアップに何人の人が入ってきたかを把握したら、コンバージョン率(売上数を総入場者数で割ったもの)など、他の指標を掘り下げることができます。
ソーシャルメディア上でのエンゲージメントを測定
オフラインで起こったことは、物語の半分に過ぎません。それと同じくらい重要なのが、オフラインでの体験がオンラインでのブランドにどのような影響を与えるかということです。これを見る一つの方法は、ポップアップ前から開催後のソーシャルメディアでのメンションやエンゲージメントを分析することです。
プロモーション用のハッシュタグがどれだけの会話を引き起こしたか、また、ユーザー生成コンテンツを通じてお客様がどのようにそのハッシュタグに関わったかを見てみましょう。ブランドのハッシュタグを使用した場合は、インプレッション数や会話数を追跡・測定します。また、コンテストや特定のプレゼントを実施した場合は、応募者数や獲得したメールの数を調べます。
ポップアップストアがブランドにどれだけの人気をもたらしたかを明確に把握するために使用できるツールは以下のとおりです。
- Sprout Social
- Brandwatch(日本語サイトあり)
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ポップアップの定性分析
ポップアップから得られる最も有意義な情報は、おそらく上記のような指標ではなく、店頭でのお客様の反応やフィードバックでしょう。これまでオンラインでしか販売していなかった場合は特に、商品に対するお客様の反応をリアルタイムで見ることは、目を見張るような経験となるでしょう。
ブランディングからディスプレイ、商品、レイアウトなど、あらゆることについてお客様と話すことができることは、小売業で成功するための重要なフィードバックとなります。
ポップアップストアの成功事例
成功するポップアップの性質の多くは変わっていませんが、パンデミックが消費者の行動にもたらしたいくつかの重要な変化は、最近開催されたポップアップのデザイン・体験に色濃く反映されています。人とのつながりを求める気持ち、オンラインとオフラインの相互作用、地元の業者への深いサポートなどは、これらのトレンドの中でも重要なものです。
以下では、新しいショッピング環境を反映して、巨額の予算をかけずにポップアップを成功させた新興ブランドの例をご紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
The Dating Shop
バレンタインデーに向けて行われたこのコラボレーション・ポップアップでは、人と人とのつながりを重視した戦略がとられました。このポップアップは、スパークリングワインブランド「Bev」とCBDブランド「Highline Wellness」の認知度向上を目的としており、店内には商品がはっきりと配置されていましたが、それが焦点ではありませんでした。
実際、このポップアップを売り出すために、ストア内でのブラインドデートのマッチングが大々的にアピールされました。ベイエリアの独身者は、性格診断クイズに回答し、事前に応募することでデートの相手を紹介してもらえたのです。(ソーシャルディスタンスの確保やマスクの着用など最低限の対策はもちろんしたうえでです)。また、友達を連れてくることも奨励されていました。カップルの場合は、プライベートで予約して、フォトジェニックなフラワーアレンジメントの前で写真撮影を行いました。
ポイント:人々はつながりを感じられるソーシャルな体験を求めています。既存の顧客基盤を持つブランドは、ポップアップショップのトランザクション要素(例:店舗が当日のピックアップ場所として機能する)から引き続き利益を得ることができるでしょうが、新規ブランドや新興ブランドの多くは、他とは一線を画したユニークな体験を作り出す必要があるでしょう。
Petal Mistry
在宅ビジネスをしていた花屋ブランドのPetal Mistryは、オンラインでビジネスを開始する前に、ポップアップコンセプトで自分のビジネスアイデアを検証しました。一見変わった方法に見えるかもしれませんが、デジタル広告よりも直接会って顧客を獲得する方が効率的なブランドは、今後このような方法を積極的に取るようになるでしょう。
創業者のPriyaは、カフェや補完的なブランドに囲まれたパロアルトのストリップモールに店を構え、小さなスペースを彼女のユニークでフラワーアレンジメントで埋め尽くしました。彼女はたった2日間で1ヶ月分以上の売り上げを達成しました。
Paka Apparelは、ツアー中にインフルエンサーが作成したコンテンツを活用したことも功を奏しました。TikTokのクリエーターBella Poarchがアルパカと一緒に撮った写真は、彼女の6,330万人のファンに公開されました。
ポイント:お客様とつながるためには、物理的なスペースや在庫が必要ではありません。適切なテクノロジーとインセンティブを用意して、お客様を後日ウェブサイトに誘導することは、低予算でブランド認知度と売上を向上させる効果的な戦術です。
No Free Coffee
カラフルなオリジナルグッズで知られるLAのコーヒーショップ「No Free Coffee」は、2021年3月に「Tiny Café」というポップアップコンセプトを発表しました。これは、文字通り壁の穴を小さなドアに見立て、その向こう側からバリスタがお客様にコーヒーを提供するというものです。
このコンセプトは17世紀のイタリアでペストが流行した際に生まれた”ワインウィンドウ”にヒントを得たものです。伝染を防ぎ、社会に潤いを与えるために、ワイン生産者は小さな窓からワインを販売していました。「No Free Coffee」も、パンデミック渦に自分たちの商品が必要不可欠であることを認識し、お客様に安全にサービスを提供するために、多大な工夫を凝らしました。
このブランドは、発売前のプロモーションビデオや舞台裏の映像を公開し、Tiny Cafeの歴史を説明するとともに、小さなポップアップがいつ登場するかをフォロワーに知らせました。このビデオは10万回以上再生され、発売までにソーシャルメディアのフォロワーを大幅に増やしました。
ポイント::舞台裏を紹介するコンテンツを作り、オンラインコミュニティを活用することは、ポップアップストアの話題性を高める強力な方法です。
Neighborhood Goods
Neighborhood Goodsは、オンラインストアと3つ実店舗をもつ新しいタイプのデパートです。Neighborhood Goodsは、国際的に有名なブランドだけでなく、消費者に直接販売する新興企業や地元で立ち上げられたコンセプトショップなど、100以上の厳選されたブランドと提携しています。同社は、ブランド・レストラン経営者・ミュージシャンやアーティストを結びつけ、お客様との交流を図り、地域社会を支援することに努めています。最近では、自社の店舗やレストランで地元ベンダーのポップアップを開催することで、大きな成功を収めています。
2021年3月には、2週間にわたってNeighborhood Goods社のサウスコングレスにある店舗で、オースティンを拠点とするカップヌードルメーカー「Chop Chop」のポップアップを開催しました。砍砍の創業者たちは,社区产品のお客様に食欲をそそる特別メニューを提供するとともに、自社を代表するカップヌードルを販売しました。
また、この夏に同社はポップアップスペース「Common Goods」を立ち上げ、COVID-19の影響を受けたブランド、レストラン経営者、ミュージシャンやアーティストが、パンデミック発生後初めて顧客と交流できるプラットフォームを無料で提供する予定です。
ポイント:このような「店舗の中の店舗」というポップアップのコンセプトは、ブランドがますます協力的なパートナーシップを求めるようになる中、2021年以降も人気が高まるでしょう。特に、大手ブランドや百貨店が地元の業者と提携するケースが増えると予想されます。このようなパートナーシップは、お互いにメリットがあります。ブランドはお互いのメーリングリストやマーケティング力を活用でき、また、既存の不動産を利用することでリスクを軽減できます。
ポップアップストアを活用して前に進もう
ポップアップストアは、単に短期間で売上を上げるだけではなく、ブランド戦略の一環として活用することができます。なぜなら、ポップアップは強力な顧客獲得・維持ツールであり、アイデアを試したりデータを収集するための身近な手段であり、ブランドの話題性や認知度を高めるための素晴らしい方法だからです。
ポップアップのこうした側面は、パンデミック後の小売業のトレンドがどのように変化しても変わらないでしょう。コミュニティとのつながりを持ちたいデジタルブランドにとって、ポップアップは実店舗での販売への手頃な第一歩ともなります。オンラインは今後も重要な流通・マーケティングチャネルであり続けますが、ブランドが顧客との長期的なつながりを構築できることは実店舗をもつことの最大のメリットです。
世界が再び開かれるとき、消費者は志を同じくする仲間やブランドと楽しく安全に交流する方法を探して求めることでしょう。本記事を参考に、あなたもポップアップを計画、実行、分析する準備をしてみてください。
原文:Roxanne Voidonicolas 翻訳:坂本真紀
よくある質問
ポップアップストアとは?
ポップアップストアを出店するメリットは?
・話題性と認知度の向上
・顧客獲得コストのバランスが良い
・常設店舗の市場がテストできる
・繁忙期に売上を伸ばす
・古い在庫の処分