プロダクトデザインやイノベーション、ブランディングその他多くの業務の効率化に多くの時間を費やすことができ、顧客開拓や売上の心配をする必要がなくなるような状況を想像したことはありますか?
一部の起業家にとって、それらはマーケティングより簡単なことですが、ビジネスの維持や成長を困難にする可能性があります。しかし、ここで卸売のチャネルを作り上げることで、そうした責任の一部(または全部)をほかの事業者に引き継ぐことができるのです。今回はShopifyで卸売に挑戦したいという事業者さま必見の内容です。
卸売とは?
卸売は、あなたの商品をまとめて小売業者に売る行為のことです。通常、割引価格で販売されます。小売業者はその商品を一般消費者に販売します。
卸売のチャネルを展開したとしても、あなたが商品を直接消費者に販売することもできます。この点は重要です。
卸売事業者として、あなた小売業者に商品を売ることも消費者に販売することも可能です。どちらかを選ぶ必要はないのです。
卸売と聞いて最初に思い浮かぶのは、Walmartやコストコのような、大規模な実店舗を持ったストアでしょう。卸売というのは、結局のところ、新興のD2C(direct-to-consumer)ビジネスによって破壊されつつある旧来のビジネスモデルとみなされているのです。
しかし最近は、Amazon、Wish、Wayfairなどのオンラインマーケットプレイスにより,卸売は独自の変革を経験中です。eコマースはショップ開設の障壁を下げてD2Cブランドの躍進を可能にしていますが、卸売は必要なものをすべて一か所で見つけられるという便利なショッピング体験を引き続き消費者に提供しています。
卸売のチャネルを作り出す理由
この新バージョンの卸売は、オンラインマーケットプレイスや小規模なブティックでよくおこなわれますが、DtoCブランドを引きつけるメリットも持っています。卸売チャネルの開設があなたのビジネスに役立つ3つの理由が、こちらです。
1マーケティング費用を増やすことなく売上を伸ばせる
D2Cブランドとしてのあなたの予算の大半は、成長のためにマーケティングに費やされます。新規顧客を獲得することは、結局のところお金がかかるのです。
商品を卸売として販売すれば、あなたは別の企業に顧客の獲得を肩代わりしてもらうことができます。そして、自分の時間と資金をビジネスの別の領域に再投資することができるのです。
2ほかのブランドの顧客を活用して商品を販売できる
新規顧客の獲得にコストが発生するのと同様に、ロイヤルカスタマーやファンを構築することも簡単ではありません。あなたが属するニッチ領域においてすでに確立されているブランドとパートナーシップを結ぶことで、そのブランドの暖簾を借りながら商品をお客さまの手に届けることができます。
3リスクの低い状態でマーケットに参入できる
新しい国やエリアにビジネスを拡張することは、倉庫や物流などの関連費用を伴います。また、よく知らない人々を相手にゼロからマーケティングをすることにもなるでしょう。新天地ですでに販売力やサプライチェーンを持っている小売業者を見つけられれば、初期コストを削減し、国際展開することのリスクを下げられます。
結果的に、卸売のビジネスモデルは、効率性ゆえに小売業者と卸売業者の双方にメリットを生み出します。小売業者は、リサーチや開発に投資することなく、補完的な意味を持つことが多い新商品を販売できます。卸売業者は、既存の顧客ベースに向けて直接販売できるアクセスを得ることによって、マーケティングへの投資を抑えることができます。
卸売の価格戦略について
価格は、成功する卸売ビジネスを築くうえで、1番とは言わないまでもかなり重要な要素となります。あなたのサイトや小売店舗で直接お客さまに販売する場合は、自分で利益率を定めることができ、50%を超える設定も可能でしょう。
卸売の場合、平均的には小売価格の50%の卸売価格を設定します。高い割引率は、小売業者が消費者に商品を販売してもまだ利益の出るマージンが残るようにするためです。卸売業者は卸売価格で50%の利益率を確保し、D2Cセールスの場合は75%を確保するのが、健全な価格戦略の一例です。
商品SKU |
商品原価 |
卸売価格 |
希望小売価格(MSRP) |
SLK101B |
$20.00 |
$40.00 |
$80.00 |
SPL103B |
$12.00 |
$24.00 |
$48.00 |
SPL107B |
$6.00 |
$12.00 |
$24.00 |
希望小売価格の50%で卸売をしても事業として利益が残るような価格戦略が必要となります。
そのため、卸売ビジネスを成功させるには、あなたの商品を売りたい小売業者に対して大幅な価格割引を提供できる必要があります。この点は小規模なビジネスにとってさまざまなリスクを引き起こすことがしばしばあり、十分な利益を確保できなくなることもあります。
幸い、利益が得られないというリスクを下げながら、卸売の価格を設定する方法もいくつか存在します。その1つが、注文数に応じた割引です。こうすると、小売業者はあなたの商品を再販するにあたり、より良い利益率を確保するために大量注文をするモチベーションが生まれます。また多くの卸売業者は、最低発注数量(MOQ)を設定しています。
商品を複数の異なる店舗に卸すことを決めた場合、小売業者が互いに相手より安い価格をつけるという問題に直面することがあります。メーカー希望小売価格(MSRP)が卸売価格戦略において重要になる理由がこれです。
MSRPは、商品を卸す小売業者との契約の一部になることが多いです。これは、オンラインのどの店舗でも同じ価格になるように、小売業者が一定の価格を保つことを保証するものです。通常、MSRPは個々の商品と一緒に表示されているか、販売を希望する小売業者に送られる価格表やパンフレットなどに表記されています。
MSRPの契約を結ぶ際に考慮すべき点として、ブラックフライデーやサイバーマンデーなどのホリデーセールを容認するかどうか、また、あなたのサイトでお客さまに商品を割引価格で販売する回数を指定するかどうか、ということがあります。
あなたは卸売業者として、小売業者が従うべきルールを設定することができますが、公平な価格とのバランスをとることが小売業者の成功には不可欠です。小売業者が十分な利益をあなたの商品から得られるなら、彼らはまた戻ってきて大口の発注を続けるでしょう。
卸売チャネルに関するセッティング:3つの方法
オンラインで卸売ビジネスを立ち上げるにあたって、純粋な卸売をするか、自分のサイトで直売するのにプラスして卸売のオプションも提供するか、という点を最初に考える必要があります。
このアプローチにはいくつかの方法があり、あなたの置かれている状況によってどれを選ぶかが決まってくると思います。
1卸売ストアをパスワードで保護する
ほかの小売業者にのみ卸売をすることを考えているなら、彼らだけが割引価格で注文できるように、オンラインのストアをパスワードで保護する必要があります。
もっとも簡単な方法は、Shopifyの管理画面で利用可能なパスワード保護機能を使うことです。
Shopifyストアは、パスワード保護が可能です。「オンラインストア」>「各種設定」から設定できます。
パスワード保護ストアを作成することによって、小売業者向けの割引価格をすべての商品に設定することが可能になります。
大きい規模で卸売ビジネスをしていて、未承認の事業者にパスワードが届くことが心配な場合は、Locksmithのようなさらに洗練されたパスワード保護アプリを使うと良いでしょう。
Locksmithアプリを使うと、商品、コレクション、バリエーションなど個別にロックをかけることができます。
Locksmithにはさまざまなカスタマイズ機能があります。ストアを見ることができる人や、商品を購入できる人に関して、高度なコントロールを実現します。共通パスワードを1つ作成する代わりに、ユーザーはアカウントを作って独自のパスワードを設定できます。
彼らのプロフィールにタグを付けたり、共有リンクをシェアしたり、ブラウザ環境を国別で抽出して閲覧できる在庫をパーソナライズしたり、さまざまな条件によって、ユーザーの商品へのアクセス許可を設定することが可能です。
Locksmithを使うことで、どの顧客がストアのどの部分にアクセスできるか、またアクセス方法をどうシェアするか、を選択することができます。
2 Shopifyを使用して別の卸売ストアを開く
すでにD2Cのストアを持っている事業者が、小売業者向けの卸売チャネルを開設したい場合には、いくつか可能なオプションがあります。もっともシンプルな方法は、別のURLを持った新しいShopifyストアを立ち上げることです。そして、上述したどちらかの方法を使い、ストアをパスワードで保護しましょう。
あなたの会社が大規模な販売をおこなっている場合は、Shopify Plusへアップグレードして、卸売チャネルの機能を活用することも検討してみてもいいでしょう。Shopify Plusでは、パスワードで保護された既存のストア内に卸売チャネルを作ることができます。
京都醸造は、パスワードで保護されている卸売ストアです。
卸売チャネルでは、既存の商品を利用して卸売ストアを作り上げるので、セッティングに必要な作業はわずかです。価格のカスタマイズも可能で、顧客グループ別の価格、パーセンテージの割引、注文数ベースの割引などを設定できます。何よりも、D2Cのストアとは別の売上レポートをShopifyレポートの内部で確認可能です。
3アプリを使用して卸売のチャネルを作成する
Shopifyストアに卸売チャネルを作成する別の方法は、Wholesale ClubのようなShopifyアプリの力を借りることです。Wholesale Clubを使うと、小売業者の顧客を、それぞれ特定の割引を適用したプランごとに振り分けることが可能になります。
Wholesale Clubの割引プランは、顧客タグを使用して割り当てられます。
このアプリにはマーケティング機能も備わっていて、より大きな割引率を得るために顧客がもっと多くを購入したくなるインセンティブの付与に活用できます。
発注量ベースの割引は、カートの合計とアイテム数量に基づいて提供されます。
Wholesale Clubでは、承認済みアカウントを持っていてログインしている小売業者のみが卸売価格での販売にアクセスできます。これにより、別のストアや商品カタログを必要とせずに、既存のDtoCストアに加えてセキュリティの高い卸売ストアを作成することが可能になります。
卸売注文のための支払い設定
卸売がDtoCと異なる点の1つが、小売パートナーから通常期待される支払い条件です。一般の販売とは異なり、小売業者が大量購入をする場合、「Net X」と表記される支払い条件が求められることがあります。これは一定期間内に支払いをおこなうという合意を意味します(例:30日以内に支払いをする場合は、Net 30)。
小売業者がこうした支払い条件を求める場合、注文してから一定日数内にベンダーとしてあなたに支払いをしたいということです。支払い前に大量に商品を小売業者に送ることは、スモールビジネスの場合はとくに、リスキーです。こうした支払い条件に合意する前に照会やデューデリジェンスをしたほうがいいと言われるのは、このためです。
Netの支払い条件をストアに追加する方法
ShopifyアプリのWholesalerとWholesale Clubはどちらも、顧客にNet支払いを提供します。顧客は合意した支払い条件に合わせてタグ付けされ、あなたのストアで買物をするときに未払いの注文ができるようになります。
Wholesalerを使うと、顧客プロファイルにタグ付けすることでNet支払いの特権を与えることができます。
卸売の顧客から代金を回収する方法
BNPL(後払い)の請求を実際に回収する方法について、オンラインで卸売チャネルを管理する事業者にはオプションがいくつかあります。その1つは、Shopifyストアで「下書き注文」として卸売を記録することです。Shopifyを通じて顧客に請求書をメールで送り、後日クレジットカードで払えるようにします。「下書き注文」では、支払いを受領したら支払い済み注文としてマークすることで、小切手での支払いを記録することもできます。
「下書き」セクションでは、ストアオーナーが注文を作成し、後日の日付で請求書を顧客に送ることも可能です。
Afterpayは、また別の後払いソリューションです。このアプリは通常D2Cの販売で使用され、分割払いの方法をお客さまに提供します。
Afterpayを使えるようにしておけば、お客さまは後日分割で支払うことができます。
この機能は、卸売のチャネルやストアでも利用でき、顧客である小売業者の支払い情報を収集して、分割で後日請求できるようにします。Afterpayのようなアプリは、手作業で未払い請求書を追いかけたり確認したりしなくてもいいように、請求回収のプロセスを自動化してくれるのです。
卸売の顧客を見つけるには?
あなたは卸売の価格戦略を決め、オンラインストアに卸売用のチャネルを準備しました。次は、見込み客を見つけましょう。でもどこで探せばいいのでしょうか?
消費者向け(D2C)サイトを利用する
だいたいの場合、小売の顧客が先にあなたを見つけてくれます。もし今までにD2Cの広告で成功した経験があるなら、あなたはすでに、あなたの商品をオンラインや実店舗で販売したい業者からのメッセージを受け取っている可能性があります。
オンラインで一般消費者に広告を打つとき、あなたの商品を扱うことに興味のあるビジネスオーナーにも同時にリーチしているのです。そのため、あなたのサイトのフッターに卸売に関する問い合わせのリンクを貼っておくことが重要になります。このやり方なら、あなたのサイトを見ている人はだれでも、将来の機会についてあなたにもっとも簡単な方法でコンタクトできます。
Rockwell Razorsは、卸売の問い合わせフォームへのリンクをフッターに掲示して簡単にアクセスできるようにしています。
展示会に参加する
展示会(トレードショー)は、小売パートナーを見つけてコネクションを築くためのもっとも伝統的な場所の1つといえます。ベビー衣料品、アスレチックレジャー用品、家具、ホームデコまで、ほとんどすべての小売カテゴリーの専門展示会が存在しています。
しかし、展示会の費用は高くなる場合が多いです。開催地までの旅費や、展示をするのであればブース料金など、かなりの費用が必要になってきます。展示会は新しい顧客を見つけてコネを作るにはすばらしい場所ですが、出展を決める前に実際に訪れ、フロアを歩いてみて出展の価値があるどうか見定めておくのが賢明です。
ドロップシッピングや卸売のマーケットプレイスに参加する
DobaやModalysといったオンラインのサプライヤーマーケットプレイスを使うのも、商品を他の小売業者サイトに載せる手段の1つです。
多くのオンライン小売業者は、ドロップシッピングの商品やローカルのサプライヤーを探しています。これらのマーケットプレイスでは、Shopifyストアから商品をリスティング(通常は少額の料金で可)して、小売業者があなたの代わりに販売するドロップシップのオーダーをスタートさせることができます。
補完関係にあるブランドに声をかける
卸売チャネルの魅力としてもう1つ挙げられる点は、D2Cビジネスと違って、事業成長のために大規模な顧客ボリュームをつねには必要としないことです。あなたの商品を売って成功しているハイクオリティな小売の顧客が少数いれば、彼らはまた戻ってきて何度も大きい発注をしてくれます。
こうした厳選されたパートナーを見つけ出すために、SNS、電話、メールで個人的にフィットすると思われる会社にアプローチすることは価値があります。補完的な商品を売っている会社からスタートするのが良いでしょう。
PehrとStokkeのパートナーシップは、補完し合う商品ブランド同士のコラボレーションの一例です。
PehrとStokkeはパートナーシップを結び、各々のサイトでお互いの商品を補完的に扱っています。
Stokkeは、デザイン志向のファミリー層に向けたベビーベッドやベビー家具を製作・販売しています。Pehrは100%オーガニックシーツを展開していて、いまはStokkeのサイトでも売られています。そしてPehrは、Stokkeのベビーベッドを自社サイトで扱っているのです。
ベストな卸売パートナーシップは、個人的なコンタクトを通じて始まり、徐々に信頼を築いていき、実際のやりとりの中で打ち解けあっていく過程で生まれます。ですから、もしあなたが尊敬できるブランドを見つけ、協力し合うことによって双方に有益になると信じているなら、コンタクトを取りに行く価値があります。
卸売は古いようで新しいビジネスモデル
Eコマースの台頭により、D2Cブランドはビジネスの立ち上げも成長もデジタルで迅速におこなうことができるようになりました。その結果、卸売は消えゆく小売のトレンドとして見限られてきた面があります。しかし、卸売の仕組みを再考することにより、新しい卸売の波がEコマースの時代に実際に盛り上がっています。
新しい販売チャネルを探しているD2Cブランドも、マーケティング予算を控えたい起業家も、卸売ビジネスを始めています。正しい価格戦略と適切な設定を実施しながら、新しい収益源となるパートナーシップをスタートし、関連する補完商品ブランドの中であなたのビジネスが繁栄するのを見届けましょう!