ネットショップを開設したら、「特定商取引法に基づく表記」というページを作ってECサイト上に掲載する必要があります。詳しい表記方法については消費者庁が発行する特定商取引法ガイドに書かれていますが、情報量が多いために必要な情報を探し出すのに一苦労するかもしれません。
そこで、今回の記事では、「特定商取引法に基づく表記とは、具体的に何を表記するの?」「書き方のポイントは?」「省略してもいい項目はある?」などの疑問に対して、消費者庁のガイドラインに基づいて回答します。書き方のポイントでは、いますぐ使える例文も多数用意しているので、ぜひご活用ください。
特定商取引法に基づく表記(特商法に基づく表記)とは
特定商取引法に基づく表記とは、販売者の情報を消費者のためにわかりやすくまとめたもののことを言います。ビジネスモデルによって記載しなければならない項目が少しずつ違いますが、どの事業も共通して表記しなければならない項目として、会社名と責任者、所在地、連絡先、料金、支払いや返品・交換の条件などがあります。
その他、ソフトウェアに関する取引の場合にはその動作環境を表記したり、特別な販売条件がある場合にはその内容を説明したりすることが求められています。
特定商取引法に基づく表記(サンプル)
販売業者 |
株式会社 ○○○○ |
責任者 |
代表取締役 ○○ ○○○ |
住所 |
〒○○○-○○○○ ○○県〇〇市〇〇区〇〇 ○丁目○番○号 |
電話番号 |
xxx-xxx-xxxx 受付時間 10:00-18:00(土日祝を除く) ※受付時間外の場合は、メールにてお問い合わせください。 |
メールアドレス |
xxxxx@xxxxx.com |
ホームページ |
xxxxxxx.jp |
商品の販売価格 |
各商品ページをご参照ください。 |
商品以外の必要料金 |
・配送料(宅急便:〇〇円、メール便:□□円) ・手数料(コンビニ決済:△△円、代引き:××円) |
支払方法 |
クレジットカード決済・コンビニ決済・代引き |
支払時期 |
・クレジットカード決済:商品注文時にお支払いが確定します。 ・コンビニ決済:注文後○日以内にお支払いください。 ・代引き:商品到着時、配達員の方へ現金でお支払いください。 |
商品の引渡時期 |
ご注文日から○営業日以内に発送いたします。 |
返品・交換 |
商品到着後〇〇日以内に限り返品・交換が可能です。 送料については、商品に欠陥がある場合には当方負担、お客様のご都合による返品・交換の場合にはお客様負担となります。 |
特定商取引法に基づく表記が必要な理由
消費者にとって、ネットショッピングはいつでもどこでも買い物ができて便利な反面、販売者と直接顔を合わせることがなく不安を感じやすいものです。そこで、消費者が安心してネットショップを利用できるように、特定商取引法に基づいて販売者の情報を表記することが事業者に義務付けられています。
そもそも、特定商取引法とは、トラブルが起きやすい販売方法の商取引において、消費者の利益を守るために定められた法律です。以下の7つの販売方法が特定商取引法の対象として指定されています。ネットショップは通信販売に該当するため、特定商取引法の対象となります。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
特定商取引法に基づく表記に必要な項目とポイント
以下の表記は,一見問題がないように見えるかもしれませんが,赤字の部分は消費者庁の要求を満たしていません。特定商取引法ガイドの内容をまとめながら、改善すべきポイントについて解説します。
特定商取引法に基づく表記(悪い例)
販売業者 |
株式会社 ○○○○ |
責任者 |
代表取締役 ○○ ○○○ |
住所 |
〒150-0002 東京都渋谷区渋谷 |
電話番号 |
xxx-xxx-xxxx |
メールアドレス |
xxxxx@xxxxx.com |
ホームページ |
xxxxxxx.jp |
商品の販売価格 |
各商品ページをご参照ください。 |
商品以外の必要料金 |
配送料は実費となります。 コンビニ決済・代引きの場合は手数料が発生いたします。 |
支払方法 |
クレジットカード決済・コンビニ決済・代引き |
支払時期 |
・クレジットカード決済:商品注文時にお支払いが確定します。 ・コンビニ決済:注文後○日以内にお支払いください。 ・代引き:商品到着時、配達員の方へ現金でお支払いください。 |
商品の引渡時期 |
ご注文確定後に発送いたします。 |
返品・交換 |
商品に欠陥がない場合の返品については、その都度ご相談に応じます。 |
事業者の氏名
販売を行う会社名や個人名を記載します。通称名や屋号、サイト名ではなく、商業登記簿上に記載された名称(個人事業主の場合は戸籍上の氏名でも可)を正しく表記する必要があります。
住所
実際に活動している住所を記載します。番地を省略した不正確な住所や、実際に活動していない私書箱などの住所のみの記載は認められていません。上記の例では番地が省略されているので、正確な住所を表記する必要があります。
連絡先
電話番号は、実際に消費者からの問い合わせに対応できる番号を記載します。
「電話番号を表記すると、24時間電話に対応しなければならない」と思う方がいるかもしれませんが、電話対応が可能な時間を明記すれば、消費者と事業者の双方にとって負担を減らすことができます。また、連絡手段について優先順位がある場合は、その旨も記しておくと良いでしょう。
[例1]
電話番号:xxx-xxx-xxxx
受付時間:10:00-18:00(土日祝を除く)。※受付時間以外の場合は、メールにてお問い合わせください。
[例2]
電話番号:xxx-xxx-xxxx
電話が繋がりにくい場合がございます。お急ぎの場合は、弊社ホームページのお問い合わせフォームからご連絡をお願いいたします。
商品の販売価格
商品が取引される際に使用される実売価格を税込で表示します。取り扱う商品数が多いために販売価格を表示しきれない場合は、「各商品ページをご参照ください」のように表記することもできます。
商品以外の必要料金
商品以外に料金が発生する場合は、項目ごとに金額を記載することが義務付けられています。
上記の例では「配送料は実費となります」「コンビニ決済・代引きの場合は手数料が発生いたします」と記載されているだけで、消費者が実際に負担しなければならない金額が不明瞭です。以下のように具体的な金額を記載する必要があります。
[改善例1]
- 配送料(宅急便:〇〇円、メール便:□□円)
- 手数料(コンビニ決済:△△円、代金引換:××円)
[改善例2]
- 配送料:全国一律〇〇円。5,000円以上のご購入で送料無料となります。
- 手数料:コンビニ決済の場合は△△円、代金引換の場合は××円が発生いたします。
支払方法
利用可能な決済方法をすべて表記します。抜け漏れがないかどうかを確認しましょう。
支払時期
消費者がどのタイミングで代金を支払うのかを明確にします。支払方法が複数ある場合は、それぞれいつ支払いが発生するのかをまとめましょう。
商品の引渡時期
販売者が商品を発送する時期を表記します。
上記の例では、「ご注文確認後に発送いたします」と記載されていますが、販売者が注文を確認してから発送までの時間が曖昧です。以下のように具体的な日数を記載しましょう。
[改善例1]
ご注文日から7営業日以内に発送いたします。
[改善例2]
ご注文確認後、直ちに商品を発送いたします。(通常、商品の発送までに3営業日前後の時間がかかります。天候不順や配送業者の都合、その他何らかの理由により商品の発送が遅延する場合は、メールにてお知らせいたします。)
返品・交換
一度購入した商品の返品や交換が可能であるかどうかを表記します。返品や交換が可能である場合は、その条件や送料負担に関するポリシーを明確にしましょう。
上記の例のように「商品に欠陥がない場合の返品については、その都度ご相談に応じます」という表記では、返品・交換の条件が不明瞭です。「商品の欠陥以外での返品・交換ができるのか」「返品・交換の期限はいつまでか」「送料は誰が負担するのか」を明記しましょう。
[改善例1]
商品到着後〇〇日以内に限り返品・交換が可能です。送料については、商品に欠陥がある場合には当方負担、商品に欠陥がない場合にはご購入者様負担となります。
[改善例2]
お客様都合による返品・交換は対応いたしかねますので予めご了承ください。商品の欠陥による返品・交換は、商品到着後○○日以内に限り承ります。送料は当社が負担いたします。
特定商取引法に基づく表記はどこに掲載する?
せっかく販売者の情報を正しく表記していても、顧客がその情報を見つけられなければ意味がありません。
そこで、特定商取引法に基づく表記は、運営するホームページの全ページのフッターメニューに掲載することが一般的となっています。消費者がどこのページにいてもワンクリックで必要な情報にアクセスできるようにしておくことが重要です。
特定商取引法に基づく表記は越境ECにも必要?
海外販売のためのECサイトを運営する場合、特定商取引法に基づく表記が必要かどうかの基準は「日本国内でも販売するか」です。
同ECサイトで国内販売も行うのであれば、特定商取引法に基づく表記が必要です。ECサイトが海外販売専門の越境ECであれば、表記は不要になります。
個人事業主でも住所や電話番号を表示すべき?
個人が自宅で事業を行っている場合、自宅の住所や電話番号を開示したくないという方もいるかもしれません。
特定商取引法ガイドによると、住所は「実際に活動している場」でなければならないとされています。つまり、自宅で事業活動を行っているのであれば、自宅の住所や電話番号を表示することが必要です。
ただし、消費者から住所や電話番号の開示を求めれた際に速やかに開示することを表記し、実際に情報を速やかに開示することができる体制が整っていれば、省略することも可能であると記されています。いずれにしても、消費者からの要求があれば速やかに情報を開示しなければならないことには変わりありません。
特定商取引法に違反するとどうなる?
特定商取引法に違反した場合、業務改善の指示(法第14条)や業務停止命令(法第15条)、業務禁止命令(法第15条の2)などの行政処分のほか、罰則の対象となります。項目ごとのポイントを押さえ、必要な情報を確実に表記するにようにしましょう。
Shopifyで特定商取引に基づく表記を設定するには?
まずは「特定商取引法に基づく表記」の新規ページを作成します。
- 管理画面から、「設定」 > 「法務関連」の順に移動(一番下に特定商取引法に基づく表記の欄がテンプレート付きであります)
- ストアの運営方針に合わせて内容を入力
- 保存をクリック
これで、特定商取引法に基づく表記がチェックアウトページのフッターに自動的にリンクされます。さらに、特定商取引法に基づく表記をストアのフッターメニューにも掲載しましょう。
- 管理画面から、「オンラインストア」 > 「メニュー」に移動
- ナビゲーションページで「フッターメニュー」 > 「メニュー項目を追加」の順にクリック
- 「legal notice」を選択し、項目名に「特定商取引法に基づく表記」と入力
- リンクに作成したページを選択
- メニューの保存をクリック
最後に、ストアのフッターメニューに特定商取引法に基づく表記が追加されたかどうかを確認しましょう。リンクから作成したページに移動できれば完成です。
消費者を守ることは事業者の信頼につながる
特定商取引法に基づく表記を正しく行うことは、消費者との信頼関係を築くための第一歩です。わかりやすくまとまった販売者情報は、「このお店なら大丈夫」という安心感を消費者に与えます。
ストアの運営方針によって内容はさまざまだと思いますが、基本となる部分には多くの共通点があります。この記事が消費者から信頼されるストアづくりに少しでも役に立てば幸いです。
文:廣田恵