ストレッチ系YouTuberとしていま高い人気を誇っているのが、気仙沼を拠点に活動する尾形竜之介さんです。立ち上げからわずか1年弱で、尾形さんのYouTubeチャンネル「オガトレ」の登録者数は30万人を記録。2021年6月現在はすでに80万人に達しています。「10年後のじぶんを大切にしよう。」をスローガンに掲げ、今年4月に自社ECサイトであるGiオンラインショップで発売を開始した、地元の気仙沼発ストレッチ専用コーヒーは、開始から数日ですぐに完売に至りました。「オガトレ」やオリジナル商品の販売を通して尾形さんは何を目指しているのでしょう。お話をお聞きしました。
■ストレッチにはメリットしかない
「オガトレ」がスタートしたのは2019年1月。理学療法士として病院でスポーツリハビリを担当していた尾形さんは、多くの人にストレッチの良さを知って、始めてもらい、継続してほしいという一念から病院を辞め、YouTubeでの動画配信を始めました。
「ストレッチにはメリットしかありません。怪我をしにくくなるし、太りにくくもなる。続けていけば自己肯定感も上がります。デメリットがまったくないんですよ。ただ、この『続ける』というのが本当に難しい(笑)。始めることは簡単でも、続けている人となるといきなり少なくなります。継続のハードルが高いんですね。この問題を解決していくために、動画でストレッチを広めようと考えました」
思い立つと尾形さんはすぐに行動に移しました。昼間に訪問リハビリやフィットネススタジオで働きつつ、夜は動画編集に時間を割く毎日。動画1本を完成させるのに要した時間は約8時間にものぼります。尾形さんはコツコツと動画編集に明け暮れました。
「最高の体を作る毎朝の3分間ストレッチ」「座ってできる!体を柔らかくするストレッチ!「足首硬い人向け!体を柔らかくするストレッチ!」。目を引くタイトルと、丁寧な動画編集、「これなら自分にもできる」と思えるわかりやすい内容で「オガトレ」の視聴者は右肩上がりを続けます。そしてあるとき、「オガトレ」が大きく化ける日が訪れました。
2019年11月に配信した「開脚できるようになるストレッチ!【2週間で開脚ベターっになる方法】」が大ブレイク。一気に視聴者が増え、オガトレの知名度も大きく上がったのです。再生回数はすでに1300万回を超えました。
このコンテンツが受けた理由を尾形さんはこう分析します。
「ストレッチのメリットを感じやすいのが良かったのだと思います。タイトルもサムネイルもかなり悩みましたが、工夫した甲斐がありました。老若男女を問わず、ずっと人気がありますね」
■コーヒーをストレッチを続けるきっかけに
「開脚できるようになるストレッチ!」で爆発的な支持を得た「オガトレ」。以後も尾形さんは着実にストレッチ動画を作成し、配信を重ねていきます。株式会社OGATOREを設立し、スタッフを抱え、社長として経営の指揮を執るいまも、YouTube動画の制作は尾形さん一人で手掛けています。
昨年12月には、週1回以上のライブ配信や限定動画で、ストレッチを深く学びみんなで実践する「オガトレ塾」を立ち上げ、書籍も2冊上梓。今年3月からはストレッチ記録を簡単にシェアできる新サービス「#オガトレ」もリリースしました。
そして、今年4月。チャレンジを続ける尾形さんは新しく、気仙沼市の焙煎士とともにストレッチ専用コーヒーを開発し、自社のECサイトで販売しました。
ストレッチとコーヒー。一見、あまり関連性がないように思えますが、コーヒーには尾形さんの信念ともいえる熱い思いが込められています。
「ストレッチは即効性があるものではありません。効果は後からじわじわと出てきます。目に見える形ではないので、ダイエットや筋トレと違って、やったからといって褒められることがないんですね。だから、どうしても挫折しやすい。そこで、オガトレを続けてもらう理由付けとしてコーヒーを考えました。コーヒーを飲みながらストレッチしてもいいし、コーヒーを飲んでからストレッチする、あるいはストレッチした後にコーヒーを飲んでもらってもいい。ストレッチを続けるきっかけにしてもらうことが目的です」
数あるドリンクの中から尾形さんがコーヒーにフォーカスしたのは、その特性ゆえです。周知のようにコーヒーにはカフェインが含まれ、その含有量はさまざまな飲料の中でもトップクラス。加えて、アンチエイジングの作用があるポリフェノールも豊富に含まれています。「10年後のじぶんを大切にする」というコンセプトにマッチした飲料、それがコーヒーなのです。
とはいえ、就寝前にストレッチをする人も少なくありません。寝る前にはカフェインを摂りたくない。そうした人に向けて、地元の焙煎士とタッグを組んで開発されたのがカフェイン入りに加えてデカフェのコーヒーです。
「フォロワーさんのツイートがきっかけで、地元の人気コーヒー屋さんとのコラボが始まりました。スタートしたのは今年の1月。豆選びから始めて、一時は1時間に7~8杯も試飲しましたね(笑)」
苦労の末に完成したのは、新ブランド「Gi by OGATORE(ジーアイ)」のストレッチ専用コーヒー「Gi Coffee ストレッチブレンド モーニング(朝)/ナイト(夜)」。カフェイン入りの「モーニング」はコクのある深い味わいが特徴です。一方、デカフェの「ナイト」は飲みやすい優しい風味に仕上がりました。
■デカフェタイプは発売から4日で完売
満を持して、ECサイトで販売を開始したストレッチ専用コーヒー。その独創的な商品の反響はどうだったのでしょう。発売に際して,尾形さんはドリップ7,500袋を用意しましたが、「モーニング」は発売から2週間で、「ナイト」に至ってはわずか4日間で完売しました。
「ちょっと驚きましたね。ただ、デカフェについてはその出来に自信を持っていました。もしかしたらカフェイン入りの『モーニング』よりも美味しいかもしれません(笑)。さまざまな日本各地のデカフェを試飲しましたが、一般にデカフェのコーヒーはあまり美味しいものがないですし、それが受けたのだと思います」
価格はどちらも8袋入りで2,480円(税込)、32袋入りが8,880円(税込)。質が担保された高級コーヒーです。それでもあっという間に売り切れたのは、「オガトレ」が培ってきた信頼の賜物であると同時に、ストレッチ用コーヒーに対する尾形さんのこだわりが多くの人に支持されたからでしょう。
“Gi咖啡ストレッチブレンド”の発売に際して、尾形さんがECのプラットフォームとして選んだのがShopifyです。
「機能が充実しているのが決め手でした。配送についてはアプリを使用して簡単に送り状の印刷ができますし、日々の在庫管理もやりやすい。いろいろ紐付けしやすいのがいいですね。6月上旬には以前の倍の数を揃えて、また発売を再開しました。お客様とコミュニケーションを図るためのチャット機能を実装したり、Amazon Pay(アマゾンペイ)などの決済方法も充実させました。」
定期便や「父の日セット」のほか、コーヒー豆の販売も新たに始めました。定期便は32袋、64袋の中から選び、「モーニング」と「ナイト」の内訳も自由に選べる形になっています。
「こうした商品アイデアは、主催している『オガトレ塾』や顧客からのリクエストがベースになっています。『Gi』というブランド名やロゴも『オガトレ塾』で皆さんの意見を集約して決めたんですよ。いつもありがたい意見をもらっています」
決して手を抜かず、地道に堅実にYouTube動画を通してストレッチの楽しさや魅力、意義を発信してきた尾形さん。ファンと間にかわされるコミュニケーションの濃密さがうかがえます。
■ストレッチに最適なTシャツを作ろう
「Gi」ブランドのラインナップはこの後も拡充される計画です。まずは7月以降に販売を予定するTシャツです。といっても、既成のTシャツにロゴがプリントされただけの安易な製品ではありません。Tシャツにも尾形さんのポリシーが徹底的に貫かれています。
「Tシャツは『オガトレ塾』塾生からのリクエストなんですが、探し求めて、抗菌・防臭、吸水速乾、UVカットの機能を備えたストレッチ素材を選びました。ストレッチ用のTシャツなので、体を動かしているうちに生地がヨレたり、体が露出したりしないように裾は長め、袖は長めに仕上げて、袖口はやや絞りました。サイズをどうするかも頭が痛い問題でしたが、大小の2つのサイズに絞りました」
縫製を担当しているのは気仙沼の縫製工場。コーヒー同様、気仙沼をアピールし、その魅力やポテンシャルを伝えていくことも尾形さんのミッションなのです。
「Giアンバサダー(Giを購入いただいた方)の皆さんからの意見を踏まえ、今後は、特に要望の高い国産で高品質のストレッチマットのほか、ストレッチを記録するノートの開発を水面下で進めています。気仙沼ではないですが、陸前高田市にオーガニックチョコの会社があるので、ストレッチに効くチョコレートも手掛けてみたいですね」
ShopifyのECサイト「Gi」のラインナップが続々と増えても、ストレッチの普及に注ぐ尾形さんのパッションは不変です。「10年後の自分」を見据えた「オガトレ」らしい商品がストレッチの普及に貢献し、多くの継続者を育てていくことは間違いありません。
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