競争は、ビジネスにおいて避けることはできません。特にECサイトにおいては、日本中そして世界中に競合がいるので、競争をしなければならなくなっています。
消費者は選択肢の多さに圧倒されているので、あなたのブランドが他とどう違うのかをすぐに知りたいと思っています。あなたとあなたの商品を正しく位置付ける方法を知ることは、競合が溢れる世の中で目立つことができるか、紛れ込んでしまうのか、その違いを生み出します。
そのため、すべての起業家が、USPと呼ばれユニーク・セリング・プロポジション(Unique Selling Proposition)を理解することが不可欠なのです。
USPとは何か?
一般的にUSPは、あなたの会社を競合他社よりも良くするために必要なものです。マーケットでほかの会社と比較したときに、自社の強みを明らかにして購入理由を、お客様に分かりやすく伝えるスローガンやメッセージなどをUSPと呼びます。
あなたのほうを目立たせるような特定の利点といえます。
信念にもとづいた計画的なUSPは、マーケティング戦略の焦点を明らかにし、メッセージ、ブランディング、コピーライティング、その他のマーケティング上の決定に影響を与えます。原則として、USPは、潜在顧客があなたのブランドに出会ったときに開口一番で発する質問にすぐ答えられなければいけません。
”あなたと他社との違いは何ですか?”
あなたのUSPは、あなたの強みを発揮し、顧客にとってあなたのブランドや商品がユニークな価値をもつ点に基づいているべきです。「ユニーク」であることが強力なUSPとなることは、滅多にありません。あなたは、ターゲットオーディエンスが気にかけている部分を違った側面から区別する必要があり、そうしないとあなたのメッセージは効果的ではなくなります。
説得力のあるUSPとは:
・断定的でありつつ、正当性がある:競合商品への反対意見を表明するような特定のポジショニングは、「わたしたちは高品質な商品を扱っています」といった一般的なスタンスよりも、ずっと心に残ります。
・顧客価値に焦点を当てている:あなたのターゲット顧客が本当に気にしているものでないなら、「ユニーク」であることはあまり重要とはなりません。
・スローガン以上のものである:スローガンは、あなたのUSPを伝達する手段の1つです。USPは、返品ポリシーやサプライチェーンに至るまで、あなたのビジネスの多様な領域で具体化されるものです。あなたは言うべきことを言ってやるべきことをやる能力を求められます。
あなたの売るものがユニークである必要はないのですが、競合がやっていない方法でメッセージを差別化する必要があります。
USPとはいえないもの
特定のマーケティングオファー(10%オフ、送料無料、24時間のカスタマーサービス、返品ポリシーなど)は、USPではありません。それらは説得力があり効果的かもしれませんが、それ自体がユニークなのではなく、競合が真似できないようなポジショニングとはいえません。
USPは、あなたの商品とブランドを競合他社と差別化するために、具体化することを選択した声明です。
USPは、たんなるホームページ上のキャッチコピーでもありません。中小企業が選択すべき全体像としての立ち位置であり、商品、ブランド、体験、その他のタッチポイントにおいて組み込まれるべきものです。
強力なUSPがどんなものなのかを理解する最良の方法は、事例を見ることでしょう。USPを正しく実践している事例9件をご紹介しますので、そこから多くを得ることができるはずです。
USPをうまく活かしている9の事例
1.年代addleback Leather
年代addleback Leatherのサイトを見て真っ先に気づくのは、「あなたが死んだら、彼らはそれを奪い合う」という有名なキャッチフレーズです。
この一文は、年代addleback Leatherの商品が提供するユニークな価値を、彼らのカラーである不遜なトーンを通じて即座に伝えています。この商品は丈夫に作られているため、所有者よりも長生きするのだ、と。そしてこのメッセージはすぐに100年保証に言及し、製品が生涯保証されるという裏付けを与えています。
日用品において長寿性をうたうことは、高価格帯の場合はとくに、明らかなUSPとなります。多くの競合が、製品を所有することのステータス性、来年は変わってしまうスタイリッシュなトレンド、高そうに見える安価なソリューション、といったものにフォーカスしている場合はなおさらそうです。
実際、彼らの製品の安価な模造品が市場に出回り始めたとき、年代addleback Leatherは「偽物の作り方」というビデオを作成して、彼ら自身の職人技をより強固に示す機会として活かしました。
2.Pipcorn
地元のストアで手軽にポップコーンが買えるのであれば、「ミニ・ポップコーン」は大したUSPとはならないでしょう。
Pipcornは、特性を活かして市場で独自の場所を切り開いたブランドのすばらしい例です。彼らは自社商品が健康志向の消費者やヴィーガンの顧客にとってスマートな選択である点にフォーカスしています。
「すべて自然素材」「全粒穀物」「量少なめ」といったフレーズが袋に表示され、ウェブサイトではほかの健康要素(グルテンフリー、非GMOなど)が強調されています。またPipcornは、たんにヘルシーと表現する代わりに、消費者が気にするであろう違いを具体的に列挙しています。
健康志向のトレンドに商品を位置付けることで、新規顧客を引きつけるだけではなく、プレミアム商品としてポップコーンを売るUSPを作り上げています。
3.Death Wish Coffee
多くのコーヒーショップやロスタリーは、「なめらか」で「コクのある」コーヒーを売りにしています。しかしDeath Wish Coffeeは、「世界一強烈なコーヒー」を売りにすることで、強いパンチの効いた一杯を欲する人に応えます。
Death Wish Coffeeは、コーヒー市場で手付かずだった領域のUSPをもとに商品を開発した素晴らしい例です。コーヒーを飲むすべての人をすぐに引きつけるポジショニングではありませんが、この商品は特定の消費者層にしっかりアピールし、模倣するのは困難です。
Death Wish Coffeeはまた、サイトやパッケージでそのことを宣言するのに加え、作り方を解説したり、今までで一番際立ったコーヒーではなかったという人に対して全額払い戻しをしたりしています。
4.Muse
Museは、製品自体が本当にユニークである場合でもUSPが必要な理由を示す、注目すべき事例です。Museは、瞑想中に脳の働きをリアルタイムでフィードバックする最初の消費者向けツールです。
彼らが提供するものに関しては最初の会社ですが、直接の競合がいないからといって、競争がまったくないわけではありません。世の人々は、この商品がなくても何の問題もなく何世紀も過ごしてきたのです。
Museにとって最大の競争相手は、「現状」(この場合は「ガイドなしの瞑想」)です。そこで当然ながら彼らのUSPは、現状のプラクティスを「瞑想の効果を最大限に引き出す」方向へ促すことになってきます。
ここでは、異なる訴求ポイントに焦点をおいた多くのコピーが、一点に集約されていくのを見ることができます。
全体のコンテンツとマーケティングメッセージを通じて、一般的な瞑想と彼らの製品でサポートされた瞑想の両方のケースを構築しています。これは、自分たちを異なるソリューションとして位置付けるために、当たり前のことを認識させるスマートな事例です。
5.Taylor Stitch
Taylor Stitchは、新商品の開発をクラウドファンディングに依存している衣料品会社です。消費者の中には、定評のあるブランドがクラウドファンディングを活用することに難色を示す人もいるかもしれませんが、ここでは彼らがそれをいかにUSPの一部としているかを見てみましょう。
Taylor Stitchはクラウドファンディングを競争力のある優位性にうまく変換しています。「わたしたちは新商品をデザインします。みなさんはそれをクラウドファンディングしてください」と。
彼らは、新商品をクラウドファンディングで作成することが旧来のセルフファンドや投資家の資金を使うビジネスモデルと比べて優れている点を、お客さまにすぐに理解させます。
- 事前注文で20%オフになる
- 環境に良い
- 実際に使うときに商品を手にすることができる
これらはクラウドファンディングの主要部分であり、表面化され、顧客価値へと転換されています。お金を節約でき、環境に優しいことに反論するのはむずかしく、信頼できるビジネスをサポートできることも、良いボーナスとなります。
彼らは型破りなビジネスモデルをこのようにポジショニングすることで、潜在リスクのある事前注文プロセスを説得力のあるマーケティング手段へと転化させているのです。
6.Tattly Tattoos
すぐ消えるタトゥー商品の多くは子ども向けで、シンプルでふざけたデザインを主流としています。Tattly Tattoosは異なったアプローチを取り、ゴージャスで複雑なアートをあらゆる年齢層に向けて提供します。
これらの一時的タトゥーは、伝統的なタトゥーのように美しく、お客さまは実際のタトゥーへの傾倒や高いコストを必要とすることなく自己表現ができるのです。
Tattlyは、同じような大胆なデザインを安全な素材で提供する直接的な競合を持ちません。そのため理論的には、彼らのUSPを開発することは簡単なはずです。しかしTattlyは、彼らの商品ともっと使い慣れた競合商品との避けられない比較から、自分たちを差別化する必要があるのです。
アートに重点を置くことで、彼らはUSPによる差別化をおこない、それを「本物のアーティストによるフェイクタトゥー」と表現しています。
デザイン中心ブランドの多くは実際のアーティストからデザインを得ていますが、Tattlyはビジネスに関するこの事実を明らかにしています。彼らのデザインの背後にいるアーティストは、タトゥーと同じくらい販売物の一部であり、アーティストと作品のために詳細なプロフィールをサイト内で公開しています。
コピーライティングのために空けておくこともできたスペースを使って、彼らは商品の背後にいるアーティストたちをオンラインストアのデザインに組み込み、タトゥーは着用できるアートであるという考えを強調しています。
7.Third Love
女性ランジェリー業界は数十億ドル規模であり、新参のThird Loveは既存ブランドと戦えるような手はずを整える必要がありました。
Third Loveは、「わたしたちにぴったり」というUSPをブランディングに不可欠な要素としました。広告やサイトのコピーにとって重要だというだけではありません。初めてのお客さまが自分にフィットするものを見つけやすくするためにFit Finderクイズも用意しています。
この約束をさらに深めるために、このブランドはハーフサイズと「購入前に試す」保証を提供します。
Third LoveのUSPは強力な約束です。ほかのブランドも買い物客のためにサイズチャートを用意できるでしょう。しかしThird Loveは、個々のニーズに応じて適切なフィットを見つけられることを最優先しています。
スタイルや品質に焦点を当てることもできたすべてのメッセージにおいて,Third Loveは多くの女性がブラを買うときに体験するペインポイントに狙いを定め、そこに賭けたのです。
8.Beardbrand
多くのコスメ会社は、男性向けであれ女性向けであれ、根本原因ではなく症状に向けて、安く早く対処できる方法を提供しようとします。BeardbrandのUSPは、業界のスタンダードと一線を画す製品思想の形で表現されます。
Beardbrandは、“本来の状態を隠したり変えたりするのではなく,あなたの体の自然なケミストリーと一緒に機能する”商品を作りたいと考えています。
不快で乾燥した人工的な商品ではなく、ユーザーの体のケミストリーとマッチする天然オイルを使っていることを、彼らはユーザーに知らせます。
この製品思想は、自分たちの基準に準拠した商品のみを販売し、業界内にはびこっている問題に立ち向かうことを意味します。
業界の標準を敵とみなすことは、顧客が抱える問題へのソリューションとして自社商品に自信をもっているブランドによってしばしば使用されるポジショニング戦略です。
9.Twelve Saturdays
大学生は校風を反映したアイテムをどこでも手に入れることができます。キャンパスにはローカルな選択肢があり、大型店では地元の大学用品が売られています。Twelve Saturdaysはこうした状況とどう戦っているのでしょうか?
カレッジ系アパレルのラインナップをただ強調する代わりに、彼らは学生たちにアメリカの大学の「アメリカンフットボールのシーズン中には土曜日が12回あり、それぞれの日にぴったりの商品がある」ことを気づかせます。学生たちにとってアメフトの試合は大きなソーシャルイベントです。多くの学生は毎週フレッシュな装いで観戦したいと思っています。同じ服を何度も着回すことや、だれかと同じアイテムはを身につけることは望んでいません。
Twelve Saturdaysは、学生におしゃれで校風に合った服を提供し、見た目も気分もシーズンを通していい感じにする、というアイディアに賭けています。彼らの商品はマスコットやロゴでこてこてにされておらず、代わりにスタイルにフォーカスを絞っているという事実があるため、少ない商品数で多くの学校をターゲットにできるのです。
アパレルに関しては、「いい感じに見える」ことはユニークとはいえないでしょう。事実、それは明らかなはずです。しかしそれを、特定のオーディエンスのニーズに合わせて文化的事象と組み合わせることで、新しく、魅力的で、一味違ったものにできるのです。
これは、USPが半端な尺度であってはならず、心のこもった努力によって、お客さまに対してブランドを定義する必要があることを思い出させてくれます。
あなたのユニーク・セリング・プロポジションを見つける方法
ここまで、強力なUSPをもつビジネスの事例を見てきましたが、あなたはどうやって自分のUSPを見つけたり、作り上げたり、あるいは洗練させたりしたらいいのかと疑問に思っているかもしれません。
USPはそれぞれ、当然、ユニークなものです。しかしだからといって、あなたが正しい方向へ進むために従うべきプロセスがないわけではありません。あなたが自分のUSPを書き出すための方法が、以下になります。
- あなたのブランドと販売商品に関する潜在的な差別化要素をすべてリスト化しましょう。しかも、具体的に。ヒット商品や説得力のあるマーケティングメッセージは、正確性に依存します。それらは、ある正しい課題を解決するものであり、顧客に対して独自の言葉でメリットを伝えます。例えば以下のようなものが考えられるでしょう。
・価格優位性
・品質の良さ
・購入後のサポート・保証の充実度
・利便性
・スピードの速さ - 競合をリサーチしましょう。あなたの競合はだれで、彼らのUSPは何でしょうか? あなたのブランドを違った方法で紹介できそうなギャップを探します。同じカテゴリーに属する製品でも、大きく異なる方法でポジショニングすることは可能です。フットウェアを例にするなら、スタイル、快適さ、あるいは耐久性を強調するなど。
- もっともユニークな見地からオーディエンスのニーズを捉えましょう。満たされていない顧客ニーズはないでしょうか? 競合には無理であなたにはアピールできそうなペインポイントはありませんか?
あえてマスを狙わずにニッチを狙い、極めることも有効な手法の一つです。例えば作業着のワークマン社は、「ワークマン女子」と言って作業着を着る女性をターゲットし、大成功したのも有名な話です。
また、複数の考え方を掛け合わせることもユニークな価値に繋がることがあります。例えば、スターバックスに書店も兼ねた店舗があることをご存知でしたか。単なるカフェの領域を超えた空間の提供に成功しています。 - データをまとめましょう。あなたが得た情報をふるいにかけ、最強のUSPを抽出します。
- ビジネス全体にわたり実行可能な適用方法を考えましょう。適切に適用することで、USPはあなたのビジネスの至るところに行き渡り、ブランド名からリターンポリシーまで、お客さまに向けたアイディアを強化できます。
あなたのUSPについてなんとなくのアイディアが得られたら、それをポジショニング・ステートメントとして紙に書き出すことは、より楽になります。
「(あなたのブランド)」は、「(ターゲット市場)」に対して、「(バリュープロポジション)」を届けるために、「(商品/サービス)」を提供します。
「(競合他社)」とは異なり、わたしたちは「(核となる差別化要素)」です。
これはおそらく、あなたのサイトに載せる広告そのものにはならないでしょう。しかし、あなたのUSP、オーディエンス、そしてハイライトする価値のある差別化要素を明らかにするうえで、とても役に立つはずです。また、意識していただきたいのは、具体性。スピード1つとっても「速い」だけでは響きません。「3倍速い」など数字を出すことによって説得力が増すものです。
USPとは?
説得力のあるUSPはどんなもの?
・顧客価値に焦点を当てている:あなたのターゲット顧客が本当に気にしているものでないなら、「ユニーク」であることはあまり重要とはなりません。
・スローガン以上のものである:スローガンは、あなたのUSPを伝達する手段の1つです。USPは、返品ポリシーやサプライチェーンに至るまで、あなたのビジネスの多様な領域で具体化されるものです。あなたは言うべきことを言ってやるべきことをやる能力を求められます。
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