普段なにげなく利用しているネット販売は、ビジネス用語ではECと呼ばれます。ECを導入する企業も多くなってきていますが、まだ導入を検討中の事業者や個人事業主もいるでしょう。
ここでは、改めてECとは何か、種類やメリットについて簡単にわかりやすく解説します。
目次
ECとは
ECとは、Electronic Commerce(エレクトロニック・コマース)の略で、インターネットを介して行われる物やサービスの取引です。eコマース(イー・コマース)と呼ばれたり、日本語で電子商取引と呼ばれたりもします。
一般的にはネットショッピングやオンラインショッピングなどと呼ばれることも多く、ECサイトを通じてさまざまな商品が売買されています。
ECの種類
ECにはいくつかの種類があります。
そのほかにも、政府や公的機関を対象にしたECや、政府や公的機関が消費者や企業を対象にしたECなどもあります。
ECができる場所
ECができる場所は大きくわけて2つあります。
ECモール
ECモールとは、Amazonや楽天市場のような複数のネットショップがまとまったサイトです。ショッピングモールのように、店舗はECモールのサイトに商品などを登録するだけで出店できるため手軽で、モールの集客力を利用することができます。その一方、出店料がかかる、決められたフォーマット内でしかサイトを作成できずブランディングしにくいなどのデメリットがあります。
自社ECサイト
自社ECサイトとは、自社オリジナルのネットショップです。自社ECサイトを立ち上げる方法には、ゼロから作るフルスクラッチ、無料で提供されているソースを利用するオープンソース、運営サービスからサーバーを借りるASPなど、いくつか種類があります。自社ECサイトはECモールに比べて自由度が高くブランディングしやすいのがメリットですが、集客や運営は自分たちで主体的に行わなくてはなりません。
- フルスクラッチ:ゼロから自社ECサイトを作ります。ECに必要な機能を自社専用で構築します。
- パッケージ:ソフトウェア開発会社からパッケージを購入し、ECサイトを作ります。パッケージには必要な機能が備えられており、ゼロから作るよりも早く、費用を抑えることができます。
- オープンソース:企業や個人が開発した無料のソフトウェアを利用してECサイトを作ります。費用はかかりませんが、カスタマイズやセキュリティ対策、不具合への対応は自社で行います。
- ASP:Application Service Providerの略で、ECサイトを運営する会社からサーバーを借りてECサイトを作ります。必要な機能がそろっていてカスタマイズもでき、セキュリティも常に最新の状態で提供されるため、手軽かつ安全にECを行うことができます。
ECの市場規模
BtoC-EC市場規模の経年推移(単位:億円):経済産業省HP
令和2年から3年の国内EC市場は、B2Bで372.7兆円、B2Cで20.7兆円、C2Cで2.2兆円と、軒並み伸びてきています。越境ECも中国・アメリカとの間での市場規模は増加しており、中国の消費者が日本から越境ECで購入した額は2兆円を超えています。
EC化率も伸びておりB2Cで8.78%となっていますが、世界のEC化率19.6%と比べるとまだ低い水準で、そのぶん今後さらに市場が成長する可能性もあります。
事業者がECを導入するメリット
場所と時間の制約がない
ECではオンラインで取引を行うため、実店舗と違って遠方の顧客もターゲットにでき、日本だけでなく海外顧客も視野にいれることが可能となります。適切な集客を行うことで実店舗よりもはるかに多い顧客を獲得できます。
また、顧客が商品を見つけて検討し決済へと進む過程で、ショップスタッフの対応はほとんど必要ないため、営業時間などを設定する必要もありません。時間の制約がないぶん、来店や購入のチャンスも広がります。
均一なサービスを提供できる
実店舗での接客では、スタッフの知識量によって商品についての説明内容に差が出たり、使用方法などのアドバイスにも差が出たりすることがあります。ECではスタッフの接客の代わりに商品説明などが記載され、その内容はいつ誰が見ても同じで、一定のクオリティを保った接客が可能です。
送料計算や決済などもECのシステムが自動で行うため、ミスや不備なども発生せず、安定したサービスが提供できます。
商品について細かく説明できる
ECサイトでは写真や説明文などを商品ごとに用意できます。商品写真は実際に手にとって見てもらうことができないECのデメリットを補うものですが、実店舗では見てもらいにくいアングルも写真で紹介できるなど、ECならではの利点もあります。
また、実店舗ではひとつひとつの商品を説明して回るのは現実的ではありませんが、ECであればすべての商品に説明文をつけることができます。読んでもらう時間の制約や、ポップを設置する場所の制約もないため、より詳細な情報を載せることができます。
購買データが得られる
ECでは顧客データや購買データを取得できるため、データ分析によって在庫の量を決めたり、マーケティングの戦略を立てることができます。ターゲット全体だけでなく、ひとりひとりの購買傾向に合わせたアプローチをすることも可能になり、より効果的なマーケティングも可能になります。
利用者がECを利用するメリット
時間と場所に縛られない
ECはインターネット環境があればどこでも買い物ができるのが最大のメリットです。気に入ったブランドや商品を取り扱う店舗が近くになくても購入できます。
さらに、実店舗のように営業時間が限られていないECは、自分の好きなときに買い物できるのも魅力です。帰宅後など夜間でも利用することができ、また、休み時間などちょっとした時間に買い物をすることも可能です。
時間や人目を気にせずじっくりと商品の魅力や特徴を確認できるのもECならではの利点と言えるでしょう。実店舗であれば長時間悩んでいると人目が気になるかもしれませんが、ECなら気にせず納得のいくまで商品について検討することができます。
家まで届けてもらえる
ECでは購入した商品は家まで配送してもらえるため、重いものや大きなものなど、自分で持ち帰るのが大変な商品でも手軽に買うことができます。
また、定期便などを利用することで一定のタイミングで商品を届けてもらうことが可能になり、日用品など頻繁に購入しなくてはならない商品を実店舗に買いに行く手間がなくなります。
他店と比較しながら購入できる
ECはオンラインで手軽に利用できるため、他店や他商品との比較も簡単に行えます。価格を比較する以外にも、取り扱うバリエーションを比べたり、似た商品を探して比較したりすることもできます。店舗間を気軽に何度でも行ったり来たりできるのもECならではです。
ECの成功事例
KINTO(キントー)
食器などの卸売からスタートしたKINTOは自社ECサイトをASPのShopifyで作成し、ブランディングだけでなく越境ECも実現しています。
日本語サイトのバイリンガル化だけでなく海外用サイトも作ることで、現地に合ったサイト構成やお知らせが可能になり、エンゲージメントやロイヤリティにつながりやすくなっています。
例えば支払い方法について、日本語サイトと海外用サイトでは案内される支払い方法に違いがあるだけでなく、日本語サイトでは「ご利用ガイド」内で細かな注意とともに記載されているのに対し、USAサイトでは「FAQ」の1つとして簡潔にまとめられています。
上:KINTO-JAPANサイト 下:KINTO-USAサイト
京都醸造
京都でクラフトビールを造る京都醸造は、B2CのほかにB2BのECサイトを開設し、販売店やレストランなど多くの顧客を獲得しています。
B2Cサイトでは箱買いでお得になるキャンペーンや定期コース、ギフトセットなどを提供して、販売効率を高める工夫をしています。
京都醸造B2B専用サイト
まとめ
日常に欠かすことのできないオンライン取引のECは、事業者にも利用者にもメリットの多いものです。その種類もB2Bから越境ECまで多様化してきており、利用できるプラットフォームも数多くあります。企業・個人問わず導入しやすい環境が整い、市場規模も成長しているいま、まだECを導入していない事業にとって、EC導入は大きな成長のチャンスとなるでしょう。
ECについてよくある質問
ECは何の略?
ECはElectronic Commerce(エレクトロニック・コマース)の略です。「イーシー」と読み、日本語では電子商取引と言います。eコマース(イーコマース)と呼ばれることもあります。
ECとECサイトの違いは?
ECはオンライン上で行われる商取引自体を指し、ECサイトはその取引を行う場所を指します。ECを行う場所がECサイトということです。
ECのプラットフォームは何がある?
ECのプラットフォームは大きくわけて、ECモールと自社ECサイトの2種類があります。ECモールはAmazonや楽天市場、自社ECサイトのプラットフォームはShopifyやBASEなどがあります。
ECと通販の違いは?
ECと通販の違いは、ECがインターネットを介した取引の名称であるのに対し、通販(通信販売)はインターネットだけでなく、電話やファックスなども含む通信を利用した取引全体の名称である点です。ECは通信販売の一種となります。