画像:グランドセントラルステーションのイルミネーションもクリスマスムードが一色。オミクロン株が流行り始め、人もまばら。
1年ぶりに活気を取り戻していたクリスマス&ホリデーシーズンムードのニューヨークですが、先週末から一変、オミクロン株が猛威を奮い街の状況が激変しています。ワクチン接種を済ませた人々が相次いで検査結果の末陽性となり、周囲の人々も続々と感染しています。米疫病対策センター(CDC)の報告によると、18日までの一週間に確認された新規感染者のうち73%がオミクロン株とのことで緊迫感が高まっています。ホリデームードだった街の飲食店も次々に閉まり始め、2020年3月のパンデミックが頭をよぎります。
現在のニューヨークはアメリカでも突出して感染者が増えている状況になりますが、こうした状況はアメリカ全土にも広がると見られ、今年のクリスマス、年末年始は家族や大切な人たちと過ごす時間になりそうです。
大手デパート「サックスフィフスアベニュー」の恒例のイルミネーションにも多くの人が集まっています
ニューヨーク証券取引所の前にある巨大ツリーは本物のもみの木を使用。
またしてもパンデミックの緊張感を取り戻しているアメリカですが、2020年3月のパンデミック以降、人々の心理に起こった変化がクリスマスにも影響を及ぼしているようです。パンデミックによって環境問題に関心を持つようになった人々が急増したことはよく知られています。自宅待機を強いられた生活によって、自分たちが出すゴミの可視化ができたこと、外に出なくなったことで大都市の空気が綺麗になり、今までの大気汚染に気づいたことなど多々あります。心を落ち着かせるために瞑想や自然に触れ合うマインドフルネスもトレンドとなり、時間が出来たことにより断捨離をして持っている服を寄付するなど、ものを溜め込まない、身軽さを求める人も多くなったのではないでしょうか。パンデミックによってセカンドハンド(古着)市場は急速に拡大しています。ロイター紙によると、2025年までにアメリカにおけるセカンドハンド市場が2倍以上の764億ドルに拡大すると予想されています。
ヘラルドスクエアにある「メイシーズ」のイルミネーション。
クリスマスプレゼントにも中古品を贈り合う時代に
米メルカリの「Secondhand Holiday Report」によると、アメリカ人はこのホリデーシーズンのプレゼントにセカンドハンドを検討している人が多いことが分かり、その数は約72%にのぼります。サプライチェーン問題を回避するために約2000万人がセカンドハンドを購入し、転売をすることで70億ドルの収益をあげるとみられています。今回のレポート調査に参加した人の77%がホリデーシーズンのギフトに少なくとも1つのセカンドハンドを購入すると答えており、高い数字を占めています。
アメリカはクリスマスにツリーの下がたくさんのクリスマスプレゼントで埋め尽くされるように,プレゼントの数重視という文化もセカンドハンドがプレゼントとして受け入れられている理由の一つとも取れます。ホリデーに家族や友人にものをたくさん贈る気前のいい文化ですが、受け取る当人たちも希望でないものを受け取る可能性があることを分かっているため、不用品をリユースするという意味でも転売はポジティブな行為として捉えられているよう。また、子供が使用するおもちゃは次の年には飽きてしまっている可能性も高く、衣類に関しても成長の早い子供はセカンドハンドで十分という考えも多いよう。こうした選択は今の時代ではサステナブルであり、行為的に受け取られるようになりました。
こうした贈られたセカンドハンドの商品は転売することによってお金を稼ぐ大きなチャンスを生み出していると捉えられていることも驚きですが、前述したように他の人の手に渡って、再度使用されることはサステナブルな行為なのかもしれません。プレゼントを受け取った人の36%がその後転売をすることを計画しているため、贈られたプレゼントですら手放してしまう、“ものを所有しない文化”が顕著になってきています。
アメリカでクリスマスにセカンドハンドを贈る文化が浸透してきた理由にはか昨日ような理由が考えられます。
1.パンデミックによってサステナブルな意識が芽生え、ホリデーギフトでさえ、セカンドハンドに対する抵抗がなくなってきた。
2.シェアをする文化が浸透しているため、以前のように所有する文化が薄れ、使用したあとは転売して別のオーナーに託すことが当たり前になってきた。
3.贈られたセカンドハンドを転売し、新たな利益を生み出すという経済の循環にビジネスチャンスを感じている人が増えている。
4.クリスマスにたくさんのものを贈るというアメリカの文化にセカンドハンドのギフトは価格的にも魅力的に映っている。
フリマアプリがアメリカで急成長
カリフォルニア州パロアルトに本拠地を構える米メルカリは2014年にアメリカ市場に進出するも苦戦を続けてきた。配送システムが整い、コンビニ配送も出来る日本と違い、配送トラブルも多いアメリカではいち早く配送を出来るシステム作りに注力。その結果、UPSと提携し、UPSが出品者に配送コードを送り、出品物を持ち込むだけで梱包・発送できる「Mercari Pack and Ship」サービスを行うなど、日本とは異なるアプローチで改善を行ってきました。そうした地道なユーザー体験の改善に2020年3月のロックダウンが重なり、一気に売り上げを伸ばし、月間GMV(流通取引総額)1億ドルを突破。この数字は極端ではあるものの、世の中の買い物に対する潮目が変わった時期だったことは明白です。
メルカリだけでなく、他のフリマアプリも好調な動きを見せています。カリフォルニア州レッドウッドシティに本拠地を構えるポッシュマークは今年1月ナスダック市場へ上場し、時価総額が74億ドルの注目のフリマアプリ企業です。ユーザーの約80%がジェネレーションZ世代、ミレニアル世代で構成され、出品者が個人店のオーナーのように自由に新品商品から中古品までを出品している。アメリカではオリビア・ロドリゴのようなZ世代を代表する新進気鋭のアーティストもビンテージをミックスしたファッションを好んでいることもあり、若い世代も価格も手頃なセカンドハンドやビンテージを手持ちや新品の服とミックスするスタイルが好まれていることもポッシュマークが堅調している理由。
このようにメルカリ、ポッシュマーク、Ebayなどのプラットフォームで販売されるセカンドハンドがトレンドやサステナビリティの視点からもポジティブに捉えられていることもあり、ホリデーシーズンのプレゼントにも自然とセカンドハンドが選ばれる時代になってきています。